阪神梅野隆太郎捕手(23)が開幕正捕手の苦しみを乗り越えた。1点リードの5回に1点を追加し、さらに2死二、三塁。打席に福留がいる間に、和田監督に呼び止められた。「詰まるのを恐れるな。センター中心に、大学時代にやっていたことを思い出せ! 感じは悪くない。もう出るはずだ」。開幕からここまで10打席無安打。福留が四球で満塁となった絶好機に、重荷は消えた。

 朝倉の外角中心の配球をじっくり見て、フルカウントになる。最後は外角直球を的確にたたき、ライナーで右中間を破った。走者一掃の適時二塁打。一気に3点を刻む今季初安打だ。梅野は言う。「なかなか出なかったので。ちょっと焦りじゃないけど。でも、自分の感じは悪くなかった。ひと言があって楽になりました」。指揮官のささやきで力みも消えた。打ち気にはやらず冷静にとらえた。

 守備の要として、かつてない重圧にさらされる。阪神では70年田淵以来となる入団2年目での開幕先発マスク。2試合、接戦が続いた。リードに苦心する一方で、打撃も求められる難しい役割だ。梅野は自らにルールを課す。「打てなくても守備への切り替えがすごく大事。グラウンドに1歩踏み出したら投手をどうするかだけ考えてやる」。スイッチを切り替え、攻守に臨む。

 梅野の快打もあり、5回は5安打5得点のビッグイニング。最後は追い上げられただけに、貴重な7番打者の加点打だった。これで開幕レギュラー全員が安打。正真正銘の出発だ。梅野は言う。「1つ1つ、サインを出すのが難しい。開幕から、いい経験になった」。試合終盤も任され3戦フル出場。修羅場を克服するたびに、正捕手らしい顔になっていく。【酒井俊作】