ベーブ・ルース超えへ号砲を鳴らした。日本ハム大谷翔平投手(20)がプロ3年目で自身シーズン最速の1号本塁打を放った。ロッテ戦(QVCマリン)の2回、バックスクリーンへ特大先制ソロ。1点差の接戦勝利へ導く決勝弾をかけた。野手で2試合、6打席目での1発。開幕から5試合で投手1勝を挙げ、アーチも刻み「二刀流」は全開モードだ。伝説の野球界の偉人に近づいた、昨季の11勝&10本塁打の自己記録を更新する予感が漂ってきた。

 空高く舞い、加速した。大谷が、高度な力技で今季1号を生み出した。2回無死、ロッテ藤岡。1スイングもせず、じっと待った。「変化球が苦しそうだったので」。3-2からの6球目、意中の好球を完璧にはじいた。外角高め、狙い澄ましていた直球。体から逃げていく球筋にバットの芯、やや先で捉えた。ねじ伏せるようにフルスイングした。バックスクリーンへ直撃する大アーチ。外角で、しかも高めのスピードボール。逆方向へ運ぶのではなく引っ張った。「長打を狙ったわけじゃないです。単打の延長で」。驚異すぎる先制ソロだった。

 今季、野手では実戦2戦目で6打席目に1発を刻んだ。前夜は5打数1安打、3三振と不快指数が残っていた。2点を追う9回2死満塁で三邪飛に倒れた。一夜明け、第1打席だった。「昨日は1本打てば、追い付けるところだった。最後の打者でしたし…。気持ちを切り替えた」。この回、一挙4点で終わってみれば決勝弾。6回にも右前打で今季初のマルチ安打と、一気に気持ちは晴れた。

 エープリルフール。重ねた努力は、うそをつかない。将来的に挑戦願望を持つ大リーグを見据え、投打で主力でも余暇に肉体強化を継続中。自身で決めたウエートトレーニングなどメニュー消化を最優先の日々を過ごす。後輩は待たせづらい先輩との会食も、日課を完了してから出席。「先に始めていてください」と遅れて合流が多々。摂取しているプロテインの効果を上げるため、大好きな焼き肉、すしなども少量にセーブ。20歳のワンパク盛りも舞台裏は、求道者だ。

 試行錯誤で3年目に到達。既に今季は開幕戦で投手で1勝を挙げ、昨季は12試合、47打席目の初本塁打もマークした。「自分が気持ち良く振れることを意識している」。オープンから、スクエアに今季はスイング始動時のスタンスを変更。重心移動の変化を求めた。細部にも固執してレベルアップ。今日は欠場見込みで、次回登板予定の4日オリックス戦(京セラドーム大阪)へ備える。昨季肉薄したルースの18年の「二刀流」の13勝&11本塁打の記録。野球も時代背景も違い、単純比較はできないが、夢を見る。球聖の足跡を濃くよみがえらせながら、一投一打を刻んでいく。【高山通史】

 ◆同一シーズン「2桁勝利&2桁本塁打」 ベーブ・ルースがレッドソックス時代の1918年に13勝&11発を記録し、大リーグでも唯一。大谷は昨年9月7日オリックス戦で10号本塁打を放ち、日本球界初の10勝&10号。ただシーズンは11勝&10発で終了している。

<大谷年度別1勝&1号>

【13年】

 ◆1勝目 登板2試合目の6月1日中日戦(札幌ドーム)で、5回4安打3失点でプロ初勝利を挙げた。

 ◆1号 7月10日楽天戦(Kスタ宮城)、野手出場34試合、92打席目に永井からプロ初本塁打。右翼へ推定120メートルの2ランだった。

【14年】

 ◆1勝目 登板2戦目の4月12日西武戦(札幌ドーム)、花巻東の先輩菊池と投げ合い、5回2/3を6安打1失点10奪三振で初白星。

 ◆1号 4月23日ソフトバンク戦(東京ドーム)で野手出場12試合、47打席目の初アーチ。寺原の145キロ直球を左中間スタンドに運んだ。

【15年】 

 ◆1勝目 初の開幕投手を務めた3月27日楽天戦(札幌ドーム)で、5回2/3を1失点で勝ち投手。