注目ルーキーのデビューにふさわしい舞台が整う。ロッテのドラフト2位、京大から初めてプロ入りした田中英祐投手(23)のデビュー戦前売りチケットが20日、完売目前であることが明らかになった。29日西武戦(QVCマリン)で初登板初先発を予定しており、4月の試合が前売りで完売すれば球団史上初となる。祝日デーゲームや来場者プレゼントの好条件に加え、田中人気で相乗効果の追い風が吹いた。

 田中本人も予期せぬ事態となった。球団によると、29日の西武戦は昨年のゴールデンウイークと比べ、3倍の勢いで前売りチケットが売れている。既に内野指定席はほぼ完売で、三塁側に若干数を残すのみ。自由席も売れ行き好調で、当日はQVCマリンの定数いっぱいである3万100人の超満員となる可能性が高い。

 埼玉・浦和の2軍練習場で好調な売れ行きを聞いた田中は驚きつつも「すごく良い舞台を用意していただける。応援したくなるような投球を見せたいです」と、大観衆の中で投げる姿をイメージするように言った。首脳陣からは、まだ正式には昇格を伝えられていないが、16日に伊東監督が1軍デビューの方針を明言した。それ以降、友人からの「チケットが欲しい」という要望がひっきりなしだという。通常、選手が望めば球団から一定数が割り当てられるが、「僕も取れません」と、全てのリクエストには応えられない状況となっている。

 好条件がそろったこともある。大型連休序盤の祝日に午後2時開始のデーゲーム。さらに、当日は「マリンフェスタ」として開催。「月1回ファン感謝デー」というコンセプトで今季から始まったイベント日にあたる。来場者全員に“マリンブルー”のレプリカユニホームが配られるため、当初から売れ行きは良かった。そこに、史上初の京大卒プロ野球選手として注目を集める田中のデビューが重なり、拍車がかかった。球団担当者は「前売り段階で完売の可能性が非常に高く、観戦ご希望の方は早めに購入いただく方がいいかと思います」と呼び掛けた。

 舞台は文句なし。あとは、準備を進めるだけだ。前回18日の楽天戦は5回7安打1失点。2軍戦3試合目で初失点し、「こういう投球では1軍ではすぐにやられてしまう」と反省。この日はキャッチボールからフォームを確認しながら投げた。最後は自らブルペンに向かい、シャドーピッチングと立ち投げを行った。「やりたいことは、だいぶできています」と口元を引き締めた。次回24日の日本ハム戦(鎌ケ谷)が、1軍デビュー前最後の2軍登板となる。ロッテは近年、観客動員の低下が目立つ。今回はもろもろの条件のおかげだが、1軍で結果を出し続ければ人気と実力でファンを呼べるはず。第1歩を刻む日が、近づいてきた。【古川真弥】

 ◆田中の愛称 チーム内では「田中」または「英祐」と呼ばれている。1月の新人合同自主トレでは、友人に「英ちゃん」と呼ばれることもあると明かし、本人も気に入っている様子。「京大くん」は、大学卒業を機に「もう、いいです」と自ら“卒業”を希望した。

<ロッテ主催試合の観客動員の推移>

 実数発表となった05年以降では、08年にリーグ3位の多さだった年間160万1632人(1試合平均2万2245人)がピーク。翌年からは、前年比で微増した年もあるが、全体として下降線。11年に1試合平均1万8511人と2万人を切ってから苦戦が続く。13年(年間126万439人、1試合平均1万7506人)、14年(年間122万3915人、1試合平均1万6999人)と2年連続で12球団最少を継続中。今季ここまでの1試合平均も1万5706人にとどまっている。