頼もしいベテラン女房の存在感が光った。プロ17年目の阪神藤井彰人捕手(38)が主役能見を引き立てる、脇役を完璧に演じた。和田監督も開口一番「能見もそうだけど、バッテリーがね。打たせて取るところ、空振りを取るところを。勝負どころで藤井のリードが裏をかいてスイングさせない。会沢のところも」と言う。前日25日の試合後、和田監督が「新井への攻めが間違っている」とマスクをかぶった梅野について指摘するシーンがあった翌日。円熟のリードが完封を呼び込んだ。

 ヤマ場は5回だろう。1死二塁で梵が遊飛に倒れると代打会沢が登場。昨季、被弾した相手だったが大胆に攻めた。変化球でカウントを整えて平行カウントに持ち込むと、最後は大胆に攻める。内角直球を選んで見逃し三振に片づけた。控えめな藤井は好投左腕を「全体的に良かった。変化球が良かった」とたたえた。

 置かれた立場で最善を尽くすのが流儀だ。昨季は2軍暮らしが長かった。それでも腐らない。自宅に帰るとテレビでナイターをチェック。特に注視したのは新人岩貞の登板だった。「捕ったことがないからね。どんな球を投げるのか。軌道はどうか」。いつ本番でバッテリーを組むか分からないから備えを徹底する。細やかな気配りが持ち味だ。18日巨人戦(甲子園)でも能見をリードして今季1勝目に導いていた。快投を再現させ、左腕との強固なコンビ結成だ。【酒井俊作】