主砲が指揮官にバースデー勝利をプレゼントした。日本ハム中田翔内野手(26)がオリックス戦で決勝打を含む2本の適時打でチームを勝利に導いた。就任以来、4番を任され続ける栗山英樹監督の54歳の誕生日に、恩返しの2打点をマーク。開幕5連勝の先発大谷を強力援護し、チームの5カードぶりの勝ち越しに導いた。

 フルスイングができなくても格別の仕事だ。中田は、ややぶぜんの表情だった。1回2死一塁。外角低めの変化球にタイミングを外された。「正直に言えば、手が出てしまった」。我慢できなかったスイングが幸運の放物線を生み出す。フラフラと上がった打球が右翼線へ落ちた。先制の適時二塁打も塁上で思わず首をひねった。「ライトフライでもおかしくない。結果オーライ」。内容は不満も上々の結果を受け入れた。

 ラッキーは続いた。3回1死一、二塁の場面では打ち損ねたゴロが二遊間を抜けて中前適時打。「あれはショートゴロ。(オリックス内野陣が)全体的に左に寄ってくれていたから」と苦笑い。2つの“凡打”が、適時打に華麗に変身。「全く自分のスイングができていない」と、バッサリ自らを切り捨てながらも、4番の責務はきっちり果たした。

 開幕から1カ月が経過。23試合で7本塁打、19打点と順調に数字を伸ばすが、調子は「普通だよ」。好不調の大きな波もなく推移しているという。見据えるのは実りの秋だ。「まだ、143分の20(試合)ちょっとやろ。今(調子を)ピークに持っていって、どうすんねん」。栗山監督が就任した12年から不動の4番。経験を積み、熟知する勝負どころへ向かう心の準備はできている。

 指揮官の記念日に白星をプレゼントした。大谷とともに上ったお立ち台で「監督の誕生日で、なんとかみんなで勝利をと言っていたので良かった」。分厚い大胸筋の上には、数字の「4」を、かたどったネックレスが光った。自身の誕生日の22日から身につける。今季は「4番への思いが強くなってきた」と自覚する思いを胸に戦う。栗山監督も「あれこそ、まさに4番」とたたえた2打点。首位に立つチームには頼りになる4番がいる。【木下大輔】