“地元”に贈る感謝の勝利だった。巨人高木勇人投手(25)が、7回途中2失点の好投で、リーグ単独トップの6勝目をマーク。三菱重工名古屋時代の7年間、真っすぐにプロの道を志し、夢をかなえた特別な場所に結果で恩返しした。「僕は名古屋で育ててもらった。元気に投げる姿を見せられたし、勝てて良かったです」と優しく笑った。

 感謝を込めた、お立ち台だった。無数のフラッシュ、カメラに囲まれる中、孝行息子は両親の姿を探した。「お父さ~ん、お母さ~ん」。マイクで呼び掛け、スタンドに目を向けたが、「分かんないです」と笑った。スタンドには故郷・三重から両親、妹、友人らが集結。試合前にはメールが複数届き、「頑張れ~」と背中を押された。

 この地に立つことが夢だった。小学4年から野球を始めたが、父泰樹さんによれば「(ナゴヤドームに)小さい時に連れてきたことはないです。連れていって、とも言わなかった」という。当時から日々のランニングを欠かさず、夢に向かってまい進した。「練習ばかりやってましたよ」(父)。夢見た初マウンドは心地良かった。

 最大のピンチで信じたのは、社会人で磨き上げた武器だった。4点リードの7回無死満塁。小笠原に対し、「初球から振ってくるなと。自信のあるボールで」とシュートで遊ゴロ併殺を奪った。ピンチでも「ああいう雰囲気をつくられる、すごいバッター」と冷静さをのぞかせ、腕を振った勝負球は極上の1球だった。

 雪辱の今季初の同一カード3連勝だった。原監督は「前回(3タテを)やられていたんで良かった。(高木勇は)安定感がある。お世話になった人も来ていたでしょうし、良かったと思います」とたたえた。貯金6で交流戦に突入する。パ・リーグの猛者が相手でも、「僕は僕です」と己の力で勝負する。【久保賢吾】

 ▼高木勇がリーグ単独トップの6勝目。巨人の新人で6勝以上は13年菅野以来だが、菅野の6勝目は6月8日楽天戦。20勝した99年上原、16勝の66年堀内も6勝目は6月で、5月までに6勝した巨人の新人は60年堀本(5月終了時に11勝)以来2人目だ。この日は得点圏に走者を背負って9人と対戦し、犠打以外は8打数0安打。得点圏での被打率がリーグ1位の1割6分3厘と粘り強い投球で、ハーラートップに立っている。