これが4番の仕事だ! 楽天松井稼頭央外野手(39)が逆転の9号2ランを放ち、敵地ヤフオクドームで首位ソフトバンクを沈めた。先発武田の前に5回2死まで無安打7三振と完璧に封じられていたが、今季初の1試合3本塁打でド派手な逆転勝ち。5日の日本ハム戦(コボスタ宮城)で苦しかった連敗を8で止めたことで、チームに活気が戻ってきた。

 七夕の夜に、チーム全員の願いが通じた。1点を追う6回1死二塁。逆転を信じて声を張り上げる楽天ベンチは、4番松井稼が放った右翼への大飛球を祈るように見つめた。入れば逆転だ。高々と上がった打球がテラス席を越え右翼フェンス最上部を直撃すると、先発の則本らが次々にガッツポーズ。喜びが爆発した。殊勲の松井稼は「追い込まれていたので、とにかく食らいつこうと。則本を勝たせたい気持ちだった」と、心地よい汗をぬぐった。

 カウント1-2と追い込まれながら、武田の決め球カーブを冷静にすくい上げた。直前の3球目もカーブだった。こちらは引っかけて自打球としたが、わずか1球で修正して逆転弾への布石とした。大久保監督は2試合連続で4番を務めた39歳に最敬礼する。「稼頭央は『シーズンオフになったら倒れます』って言っていたよ。我々の年代まで、4番はチームの責任を全て受け止めるものだった。それくらいの力で戦ってくれている」と感謝した。

 5日に左太もも裏を痛めた牧田がこの日の先発を外れるなど、故障者続出のチームは思うようなメンバーを組むことが出来ない。その中で、開幕から走攻守で高いパフォーマンスを保つ松井稼の存在は日増しに際立っている。76試合目での今季9号はチーム最多で、楽天での自身最多記録となる13年の11本を上回るハイペース。「勝てて良かったです」と、チームに貢献できたことを何より喜んだ。

 6日の福岡空港で七夕の願いを聞かれた大久保監督は「優勝。それしかない」と力強く答えた。一時は8連敗で借金6と追い込まれたが、この勝利で首位との差を1ゲーム縮めた。「3点差になっても、ベンチは絶対に食い下がるぞという雰囲気だった。その気持ちが伝わった」と振り返る。絶対に諦めない。指揮官の強い思いに、4番がバットで応えた。【松本岳志】