プロ7年目のソフトバンク巽真悟投手(28)が、悲願の初勝利を飾った。4点を追う9回に登板し、3者凡退に抑えた。その裏に、まさかの展開が待っていた。「逆転してくれ、と思った。ベンチで僕が一番、ドキドキしていたと思う。僕の立場では、投げる試合は全部抑える。そんな気持ちだった」。初めて上がったお立ち台で喜びをかみしめた。

 08年ドラフト1位で入団したが、長く力を発揮できなかった。シーズン途中から敗戦処理で1軍昇格。同期の二保が先に初勝利を挙げ、刺激を受けた。五十嵐からは準備の大切さを学んだという。工藤監督は言った。「能力からすると、まだ7、8割しか出していない。今日のようなゲームじゃなく、勝っている所で任されるように、より高い所を目指してほしい」。ウイニングボールはサヨナラ弾のため、試合後に戻ってこなかった。「できれば、ほしいが、(投球で)使ったボールを親にプレゼントしたい」。ミラクルが生んだ初勝利は、始まりに過ぎない。