10年ぶり頂点へ、真夏の大勝負-。首位阪神が今日18日から3位巨人との3連戦に臨む。3・5ゲーム差をつける宿敵を一気に突き放す大チャンス。2勝すれば、王者の自力優勝の可能性を消すことができる。17日、都内で練習を見守った和田豊監督(52)も気合満々。就任後、勝負どころで迎えた伝統の一戦は苦い記憶しかない。今年こそ、いざ!

 ひと言、ひと言に自信と気合が込められていた。巨人との3連戦を翌日に控えた和田監督が「全員野球」で王者にリベンジすることを誓った。神宮屋内練習場での指名練習を終えると、別室で報道陣と向き合った。歯切れも、トーンも、普段とは違った。

 「巨人戦ということもあって、より一層、そういう(これまでとは違う)気持ちが。あえて言わなくても選手全員がそう思っている相手だと思う」

 試練の長期ロード開幕から球団初の4カード連続勝ち越し。混戦セ・リーグで今季初めて2位に3・5ゲーム差をつけた。そんな中で迎える敵地での伝統の一戦。重要性は言うまでもなかった。昨年、一昨年と巨人に追いすがりながら8月、9月の直接対決で突き放された。そんな正念場をどう戦うのか。指揮官はここまでの戦いで答えを見つけていた。

 「今の布陣で9人野球はなかなかできない。全員野球ということになっていく。代打の仕事であったり、守備固めの仕事であったり、みんなが必死になって仕事をしようとしてくれている。今こそ球団のスローガンである『as one』というところをね。ここからが大事。どれだけ全員が1つになって、同じ目標に向かっていけるか」

 球団フロントとともに、和田監督も知恵を絞って決めた今季スローガンが「as one」。今こそ、すべての力を1つに、それを体現する時だと号令した。

 手ごたえもある。巨人3連覇の中で、見せつけられたのは選手層の厚さ。主力が欠けても、それに匹敵する選手の存在でチーム力が落ちない。夏場に戦力を整えられる王者との差を痛感した部分だった。ただ、今年はこの長期ロードの中でも関本が離脱すれば狩野が、上本が抜ければ大和がカバーしてきた。さらに江越、岩崎、歳内、秋山、岩本ら若手も結果を出しつつある。これまでとは違う-。そんな確信が指揮官の言葉ににじんだ。

 「球宴後くらいから若い選手も徐々に出てきた。バランスという点では控え層も力をつけてきているな」

 今季、東京ドームでは2勝6敗。打率2割1分5厘と猛虎らしさが発揮できていない。ただ、指揮官は虎党の熱烈な後押しを背に負のデータをすべて覆す決意だ。

 「明日からは巨人ファンに負けないくらい、全国のタイガースファンの皆さんが声援してくれると思うんで。アウェー感も消されてくると思う。その期待に応えたい3連戦だよね」

 追われる立場になっても挑戦者の姿勢は変わらない。和田阪神が王者にこれまでの借りを返しにいく。【鈴木忠平】

 ▼阪神が今日18日からの巨人戦に2勝1敗以上で、巨人の自力優勝の可能性が消滅する。阪神が18、19日○○と仮定。阪神は、今カード3戦目となる20日以降の巨人戦6試合に全敗しても、他の28試合に全勝すれば最終勝率6割1分3厘。巨人は残り31試合に全勝しても、同6割6厘で阪神を下回る。なお阪神が18日から3連勝しても、広島が自力で阪神を上回る可能性が残るため、阪神の優勝マジックは点灯しない。

 ▼88年の東京ドーム開場以降、阪神は8月の同球場での巨人戦に26勝67敗6分けで勝率2割8分と大苦戦。他の月の105勝136敗3分け、勝率4割3分6厘から大幅に悪化している。東京ドームで8月に勝ち越しは91、92、99、09年の4度しかなく、いずれも1カード2勝1敗。

<和田監督就任後の8月東京ドーム失速VTR>

 ◆12年(7~9日△●●)3試合でわずか2得点。巨人戦8連敗となり、東京ドーム9戦勝ちなし。借金17。首位巨人とのゲーム差は22と、絶望的な数字がずらりと並んだ。

 ◆13年(2~4日○●○、27~29日●●●)1位巨人と5ゲーム差の2位で迎えた、27~29日の直接対決。3連勝して2差に迫るもくろみが泡と消え、逆に3連敗。残り32試合でゲーム差は8に広がり、優勝争いは事実上終結した。

 ◆14年(12~14日○●●、26~28日●○●)首位巨人を追い上げようと対戦した12~14日に1勝2敗で2・5差に後退。26~28日も同じく1勝2敗で負け越し。前回と同じく2・5差に開き、阪神は自力優勝の可能性が消滅した。