阪神OB江夏豊氏(67)と田淵幸一氏(68)の黄金バッテリーがこの日、後輩たちに優勝エールを送った。球団80周年の「レジェンズデー」のイベントで、始球式に登場。ヤクルトに連敗した和田阪神にも江夏氏は「前を走る方が強い」と1ゲーム差のアドバンテージを強調。田淵氏もまだ阪神が優位と、メモリアルイヤーVを期待した。

 ついにヤクルトと巨人に1ゲーム差に迫られた。それでも江夏氏は、まったく動じる必要はないと言い切った。

 江夏氏 今日の女子マラソンを見てもそうだけど、前を走る方が強いんだ。「追う者の強み」というけど、それはごくまれ。勝負事は前を走るのが鉄則。(阪神が優勝に)一番可能性の高い位置にいる。

 好例に挙げたのはこの日の世界陸上、女子マラソンで金メダルを獲得したエチオピアのディババだった。混戦の終盤、前に出ると猛スパートをかけて逃げ切った。ペナントレースも残り25試合。たとえ1ゲーム差でも首位を走る阪神が、追うヤクルトや巨人よりも優位だと分析した。

 江夏氏 残り試合はまだまだ苦しみの連続。残り10~15試合の間にも大きなヤマが来るだろう。今タイガースは苦しいと思う。でもそれを乗り越えて、いい思い出をつかんでほしい。OBとして心から願っている。

 そしてレジェンド左腕は、優勝するために「一番大事なこと」を挙げた。

 江夏氏 ケガ人を出さないこと。今上位にいるのは主力のけが人が少ないから。100試合を超えると選手層が大事になってくる。

 江夏氏と同じく現役時代はタテジマで1度も優勝できなかった田淵氏も思い入れは強い。こちらはマラソンではなく、競馬にたとえてスパート指令を出した。

 田淵氏 4コーナーを回った直線。うまく和田騎手がムチを振るってほしい。特に外国人を乗せていってもらいたい。去年は巨人が9月に貯金8を稼いだ。今年は阪神に走ってほしい。

 42年前の73年8月30日。甲子園の中日戦で江夏が延長11回にサヨナラ弾を放ち、田淵とのバッテリーでノーヒットノーランを達成した。伝説の8・30。レジェンドから贈られた優勝エールは、尊い。【松井清員】

 ◆江夏の延長11回ノーヒットノーランとサヨナラ弾 73年8月30日の中日20回戦(甲子園)は阪神江夏が延長11回表まで無安打無得点に抑え、11回裏に先頭打者として本塁打を放ち試合を決めた。この勝利で阪神は首位を奪回。打者34人に142球を投げた江夏は、4回に谷沢へ死球、5回に広瀬へ四球を与えただけだった。奪った三振は7。江夏の本塁打は2号サヨナラ弾で、右翼ラッキーゾーンへ入った。