元西武で7月に就任した東北福祉大の大塚光二新監督(48)がリーグ戦初采配初勝利を挙げた。東北工大に先勝。計16残塁と苦しみながらも9回表に得点し、3投手による継投で逃げ切った。チームは4季連続で全国大会出場から遠ざかっているが、プロ野球のノウハウを生かした組織運営で常勝軍団復活を狙う。

 大塚新監督が、「生みの苦しみ」を味わいながら、記念すべき1勝を挙げた。試合後、泉裕斗主将(4年=宇治山田商)からウイニングボールを手渡され、「価値がある。全国への1歩? ちっちゃな1歩だけど究極の1歩だね」とリーグ戦初勝利をかみしめた。

 「最後に相手より1点でも上回っていればいい」。大会前の言葉通りの内容だった。計12安打16残塁。1回表2死満塁の好機を逃し、7回まで毎回得点圏に走者を進めたが、タイムリーが出ない。一方、3投手の継投で失点は防ぐ。得点を入れたのはタイブレークも覚悟した土壇場の9回表。先頭の泉主将が内野安打で出塁。1死満塁から7番井沢凌一朗(3年=龍谷大平安)の右犠飛で待望の1点をもぎとった。

 ぎりぎりの勝ち方にも、新監督は超ポジティブだ。「10-0の5回コールド勝ちより、9回までやって勝つほうが収穫は多いと思う。全国にコールドはない。現に春は2戦とも0-1で負けているからね」。勝ち点を落とした今春の仙台大戦を引き合いに出して、1点の重みを強調した。

 就任当初ということもあり、攻撃の采配は村瀬公三助監督、ブルペンは阿部一斉コーチに一任するなど、プロさながらの分業制を敷く。選手起用も「紅白戦を行い、学年に関係なく調子のいい選手を使いたい。個人タイトルは関係ない」と実力第一の意識を浸透させ、チーム内競争を高めるつもりだ。

 一方でメンタルケアも怠らない。試合中はベンチ前列中央に陣取り、拍手やタッチで選手たちを鼓舞する。泉主将は「先頭に立って声を出してくれて、失敗しても『試合は流れている。次、次』といってくれる。落ち込む暇がない」と話した。常勝軍団再建を託された大塚新監督は「まだまだ伸びるチーム。相手に関係なく全力で勝ちに行く」と宣言していた。【佐々木雄高】

 ◆大塚光二(おおつか・こうじ)1967年(昭42)8月26日、神戸市生まれ。兵庫・育英高から86年に東北福祉大に進学。外野手として全日本大学選手権で2度準優勝に貢献した。89年ドラフト3位で西武入りし、01年に現役引退。13年に日本ハムコーチに就任。昨季限りで退団、今春から東北福祉大の非常勤講師。