最年少で大台に到達した。楽天松井裕樹投手(19)がオリックス戦で2点リードの9回から登板。3者凡退できっちり試合を締めて、30セーブ目を挙げた。20歳を迎えるシーズンでの30セーブ到達は史上初の快挙。開幕前にはこの日引退会見を行った小山伸一郎投手(37)から抑え転向に向けて助言をもらうなど、恩人の節目の日に惜別のセーブとなった。

 歓喜の瞬間に松井裕の胸が高鳴った。最後の打者オリックスT-岡田を抑えると、超満員2万6368人のファンからジェット風船が一斉に上がる。節目の30セーブとなる勝利の祝砲を背に豪快なガッツポーズを繰り出した。守護神の醍醐味(だいごみ)は「風船を膨らませる音を聞きながらゲームセットの瞬間をフィールドで味わえること」と、与えられた特権を心からかみしめた。

 進化を見せた。最後の1球。フルカウントから左打者のT-岡田に投じたのは139キロのカットボールだった。胸元からストライクゾーンへと曲がる「フロントドア」で後ずらせた。見逃し三振。今月から投げ始めた新球で仕留めた。「まだ相手には定着していない。うまく使えた」と手応えを口にする。チェンジアップが研究され、狙われている意識を逆手に取った。

 恩人がいたから、守護神になれた。昨年オフ、小山伸からヤンキース田中との合同自主トレに参加しないかと声をかけてもらった。13年にシーズン無敗を記録した前エースは高校時代から憧れの人。「お願いします」と返答した。小山伸は参加できなかったが、田中との自主トレは松井裕を変えた。フォームや練習法、食生活と全てが身になった。今季は制球難も改善。直球の質も上がった。

 2月の久米島キャンプ中に中継ぎ転向を言い渡された後も、小山伸が真っ先に食事に誘ってくれた。先発にこだわりたいという気持ちもあった。しかし「気持ちを切り替えて、チームのためにやっていこうぜ」と優しく諭され、心が整理できた。その頼れる先輩はこの日、引退を発表した。「残り短い間ですけど、たくさんアドバイスをもらいたい」としんみりと話した。

 残り試合は14。「先輩たちの支えで30まで積み重ねることができた。1年間最後まで務めていきたい」と意気込む。チームのため、9回までつないでくれる投手陣のため、最後まで腕を振る。【島根純】

 ▼松井裕が球団初の30セーブ。95年10月30日生まれの松井裕は現在19歳だが、シーズン記録はその年の満年齢で比較するため、今年の松井裕は20歳シーズン。これまでシーズン30セーブは93年石毛(巨人)10年山口(横浜)14年西野(ロッテ)15年山崎康(DeNA)の23歳が最年少で、松井裕の20歳シーズンは4人を抜く最年少記録。