天敵を引きずり降ろし、追うライバルの自力Vを消した。ヤクルトが7回、山田哲人内野手(23)の決勝二塁打などで2位阪神を破り、ゲーム差を2に広げた。今季5戦4敗と苦手にした先発藤浪に対し、5四球を選ぶ我慢の打席に徹した。球数を投げさせる作戦がはまって、降板直後の7回に3点を勝ち越した。今日22日に、巨人が阪神に敗れた場合、ヤクルトは引き分け以上で優勝マジック「8」が点灯する。

 つかんだ流れを手放さなかった。ヤクルトは2-2の7回1死走者なしから、連打で一、二塁。得点気配が高まる中、山田が打席に入った。「とにかく自分の強い打球を打とうと思っていた」。2番手・安藤の浮いたスライダーを捉え、左翼フェンス直撃の決勝二塁打を放った。さらに次打者の畠山から連続四球で押し出しの追加点を挙げると、雄平の犠飛でダメを押した。少ないチャンスを生かし、1イニングで3点を勝ち越し。勝負あった。

 勝利を手繰り寄せた伏線は、天敵攻略にあった。真中監督は「しつこく攻めることができた。理想的」と、してやったりの笑みを浮かべた。今季5度対戦して0勝4敗、甲子園の先発試合ではチーム11連勝中だった難敵・藤浪に対し、初回から「待球戦」に持ち込んだ。1死走者なしから川端は6球を投げさせ、次打者の山田はストレートで、ともに四球をもらった。2死一、二塁からはバレンティンも7球目をハーフスイングでこらえ、計3四球を選んで満塁機をつくった。先制点にこそ結び付かなかったが、初回だけで28球を投げさせた。

 攻略法はシンプルに3点に絞った。(1)いつも以上にゾーンを小さく待つ、(2)甘い球は積極的に仕掛ける、(3)追い込まれても粘りきる、の3点を指示した。

 着実に、藤浪のスタミナを削っていった。6回までに119球を投げさせ、同点の6回2死満塁で代打が送られた。藤浪には3安打2得点に抑えられても、降板作戦が成功した直後の7回、一気に畳み掛けた。

 敗戦からヒントをつかんだ。藤浪には前回対戦(8月28日)で完封されたことで、杉村チーフ打撃コーチは「いかに荒れた直球の見極めができるか」とみて、傾向と対策を練った。真中監督は「6回で120球くらい。それが、彼の交代につながった。早く彼をマウンドから降ろすことを狙っていた」と、得意顔でうなずいた。

 18日の巨人戦から始まった7連戦は、2勝2敗で折り返した。山田は「どこのチームにも優勝の可能性はある。毎試合、本当にプレッシャーのかかる中、体力的にも精神的にもきついですけど、勝利に貢献していきたい」と力強く言った。残り10試合。勢いそのままに、頂上まで突っ走る。【栗田尚樹】

 ▼ヤクルトが阪神を下し、阪神の自力Vが消滅。現在、首位ヤクルト以外に巨人と広島にも自力Vは残っているが、ヤクルトは今日にもマジックが点灯する。ヤクルトが広島戦に○か△、巨人が阪神戦に●を条件にM8が出る。この日は山田がV打を含む3安打、2打点と活躍。ヤクルトは8月20、21日の2連敗を最後に連敗がないが、同22日の中日戦からチームが負けた次の試合の山田は28打数17安打、5本塁打、14打点で打率6割7厘の大当たり。7試合のうち4試合で猛打賞を記録するなど、山田のバットがチームの連敗を阻止している。