すべてを壊す! 広島丸佳浩外野手(26)が20日、打撃フォームを大きく変えた。今季終了時から打撃改革に取り組み、この日から構えのときのグリップ位置を上げた。今季までの自身の打撃フォームを象徴する形を変える大きな変化は覚悟の表れ。秋季練習から連日のように志願の居残り特打でバットを振りこみ、新しい感覚を体に染みこませようとしている。

 全体練習が終わると、丸は迎打撃コーチ補佐に居残り特打を志願した。太陽が傾き始めたマツダスタジアムの一塁ベンチ前で足場をならすと、構えたバットのグリップを自然に左肩付近まで上げた。違和感がある。今季まで傘を持つように右肘を約90度に曲げて左胸付近で構える打撃フォームが特徴的だった。積み重ねてきたものを1度壊さなければ、打撃改革はできない。覚悟の表れだ。

 「残した数字は使い続けてもらっただけ。今季成績がこれだけダメだったら、何か変えないといけない」 今季打撃を崩した。軸足の左かかと重心となり、右肩が上がった。捉えられるはずの球を打ち損じ、打率は2割4分9厘まで落ちた。いずれもチームトップの19本塁打、63打点も納得できるはずがない。「少しずつ体のバランスが変わってくるので、ずっと同じままではいけない。今年はそのズレを戻せなかった」。募る危機感。ベストナイン獲得や日本代表経験のある打者が、打撃を根底から変えようとしている。

 シーズン通して丸を見てきた迎コーチ補佐は言う。「シーズン中にはできない極端な意識付けができる。矯正する意味でも強引にやっている」。秋季練習初日からフィニッシュでは右足に体重を乗せるなど、下半身の使い方を変えた。さらに「第1クール最終日(18日)に試してみた感覚が一番良かった」ことで構えも変えた。秋季練習恒例となりつつある居残り特打では、この日約45分間バットを振り続けた。

 1度作り上げたものを壊せるのは、積み重ねてきたベースがあるからだ。昨季まで師事した新井前打撃コーチの教えを継承しつつ、新たな形を模索する。「練習が続く今だからこそできる。もちろん来季を見据えてやっている」。すべてを壊し、丸が0(ゼロ)から再出発を図る。【前原淳】