安芸のMVPはポスト鳥谷だ。阪神が17日、高知・安芸での秋季キャンプを打ち上げた。現場を取り仕切った高代延博ヘッドコーチ(61)は、3年目の北條史也内野手(21)を高く評価。「春に比べて別人」とまで絶賛した。2年連続となる来春キャンプの1軍スタートは濃厚。藤浪と同期の大器が、来季こそは鳥谷を脅かす存在になる。

 首脳陣のハートをつかんだのは21歳の北條だった。17日間に及ぶ「厳しく、明るい」キャンプが終了。高代ヘッドは、まず育成選手原口の名前を挙げた後、問わず語りで北條について話し始めた。

 「もう1段階、2段階ステップアップした。(今春の1軍沖縄キャンプ時と比べて)今は別人。取り組み方もそうだし、守備力も上がった」。すべての面でMVP級とべた褒めだ。

 確かに安芸の主役だった。13日の紅白戦では、6回に決勝の2点適時打を放つなど勝負強さをアピールした。毎日のように夜間練習にも参加。高代ヘッドも「子供のスイングから大人のスイングに変わっている」というほどの変化が生じた。

 北條 充実したキャンプを送れた。自分がレベルアップしたいと思った以上に守備面で成長できた。

 守備でも新任の久慈内野守備走塁コーチから「送球は100%を目指せ!」とハッパをかけられ、ノックではいつも泥だらけ。この秋、背番号2がひとまわり大きくなったことは間違いない。

 目の前にはフルイニング出場を続ける鳥谷という高くて分厚い壁がある。虎のリーダーは、プレー面だけでなくチーム内の精神的支柱として絶対的な存在だ。乗り越えてほしいとまでは言わない。少しでも近づいてほしい。これが首脳陣の本音だろう。

 北條 鳥谷さんは実力があるし、信頼されている選手。まだまだ、自分はそういう存在にはなっていないので。

 現時点で競争相手というには、おこがましい。それでも、高代ヘッドは「最初から控えを狙う選手はいないんだから。やればできるんだということを実践した人が監督になっているんだからね」と、努力で球界を代表するスラッガーに成長した金本監督を例に挙げ、ムチを入れた。「実りの秋」を糧にして、少しでも鳥谷に追いつく。【桝井聡】

 ◆北條史也(ほうじょう・ふみや)1994年(平6)7月29日、大阪府生まれ。光星学院(現八戸学院光星)で2年春から4季連続甲子園に出場。12年ドラフト2位。今季ウエスタン・リーグでは112試合、10本塁打、43打点、打率2割4分3厘。177センチ、75キロ。右投げ右打ち。