都市対抗野球大会個人最多タイの14本塁打を誇る「ミスター社会人」、ホンダ・西郷泰之内野手(43)が25日、埼玉・狭山市の同社で引退会見を行った。96年のアトランタ五輪で銀メダル獲得に貢献し、都市対抗では歴代最多となる6度優勝。25年の社会人野球人生を全うしたかに見えるが、本人の感覚は違った。

 引退の理由を問われると、「できることならずっと現役を続けたい気持ちは持っていましたが、監督から来季の構想に入っていないと伝えられて、チームに必要ないということで、それを受け入れた感じです」と説明。他チームからのオファーなどはなく、野球を続ける環境がないため、今後は社業に専念する。「これから野球ができなくなった時に、悔しさが込み上げるのかなと思います」と現役への未練をにじませた。

 アトランタ五輪でともに戦った元オリックス谷、元ソフトバンク松中らがプロに進む中、アマチュア一筋の道を歩んだ。最も印象に残る本塁打は、12年の都市対抗で放った14号を挙げた。「プロの第一線の選手とも一緒にプレーしましたが、自分が人より優れているものは1つもないです。ただ野球が好きで、野球に対する思いは、熱いものがあると思います」。その思いが、25年間の社会人野球人生の支えになった。【前田祐輔】