広島黒田博樹投手(40)が17日、マツダスタジアムで契約交渉に臨み、現役最高となる年俸6億円で更改した。今季4億円から一気に2億円アップ。11勝8敗の成績だけでなく、チームへの貢献度、営業面の効果なども加味された。日米通算200勝まで、あと7勝。来年2月に41歳になる右腕は、より1球の重みを胸にプロ20年目のシーズンに挑む。

 来季も広島のマウンドに立つ黒田に、球団もおとこ気で応えた。球界歴代3位タイ、現役では最高となる年俸6億円。一気の2億円増提示に、黒田も笑みを交えながら感謝を口にした。

 「(来年)41歳でこれだけの契約をしてもらえるというのは、カープだけでなく、いろんな球団の選手たちに多少なりとも勇気を与えられるんじゃないかと思います。前回いたカープでは考えられないような契約をしてもらった」

 8年ぶりに帰ってきた日本で、見せた姿が評価された。数字だけではない。ファンは投球に酔いしれ、チームメートは背中から多くを学んだ。他球団の選手たちも対戦を熱望。黒田の1球からメッセージを受け取った。おとこ気が今季の野球界を席巻した。

 だが、シーズン終了後は何度も「引退」の2文字も頭をよぎった。現役続行に年俸は大きな問題ではなかった。ファンやチームメートの声が黒田を突き動かした。「それに応えないといけないというか、応えるのがプロとしてやらないといけないことかと。そこでやめるという決断を自分ではできなかった」。探していた今季以上のモチベーションは明確には見つかっていない。だが「探すということは、どこかでもう1年やりたいというか、やらないといけないという気持ちがあったんだな」と気づかされた。

 チーム合流は今春と同じ沖縄2次キャンプを予定する。年内中に家族が住むロサンゼルスへ渡米し、例年のようにトレーニングを続ける。来季はあと7勝に迫る日米200勝がかかる。「やる以上は1つでも多く勝たないといけないですし、勝ちたいと思うので、それもひとつのモチベーションになる」と口にしつつ、黒田節で締めた。

 「自分の中で精いっぱいやってそれが199勝であろうとも、僕の中ではすっきりすると思います。現時点ではまたそういう気持ちで来季やりたい」

 新たな称号に、来季もおとこ気で応える。その姿が、また新たな伝説を作っていく。【前原淳】

 ▼黒田が6億円で契約更改。日本人選手の6億円到達は松井、佐々木、阿部に次いで史上4人目。黒田は来季41歳だが、40代選手では08、09年金本(40、41歳)の5億5000万円を上回り最高額になる。来季年俸ランキングのトップは確実。広島選手の最高年俸は、85年山本浩二(当時8500万円)以来31年ぶり。