日本ハム栗山英樹監督(54)が“職権”を有効活用し、4年ぶりのリーグ制覇、10年ぶりの日本一へ、決意を示した。13日、生活拠点を置く栗山町にある栗山警察署で一日署長を務めた。初の大役に緊張しながらも、最初の訓示では「(今オフに栗山町で)優勝パレードをやらせてもらう。間違いなく、迷惑をかける」と、署員に警備などの準備を指示。土屋仁署長(51)は全面バックアップを約束した。

 両肩に金色の飾りひもがあしらわれた濃紺の制服姿で、栗山監督が背筋を伸ばした。栗山警察署で一日署長の大役。人生初の体験に緊張気味だったが、署員への訓示では今季にかける思いを目いっぱい込めた。「日本一になってパレードをやらせてもらう。寒い中、間違いなく警察の方にはご迷惑をかける。すいませんが、よろしくお願いします」。リーグを制した12年12月に栗山町で行ったパレード再現を誓い、協力を要請した。

 一日署長の大号令に、全署員が気を引き締めた。「本物」土屋署長は年末に向けて、バックアップを約束した。「ぜひ、だね。栗山町にとっても、警察署にとっても栗山監督の存在は追い風。町民と結束して、パレードを成功させたい」。シーズン前だが、栗山監督の熱意に日本一奪還を確信。バラ色のオフを締めくくるであろう、手弁当の優勝パレードの成功に思いをはせた。

 覇権を取り戻すべく、栗山署長は自主トレ中の選手への号令も忘れなかった。「今、オーバーワークにならないように考えてほしい」と、調整が“スピード違反”にならないようにというメッセージ。「スタートも大事だけど、最後に勝っているかが大事」。若い選手が多いだけに、春季キャンプでのアピールを目指し、急ピッチ調整になることを憂慮。長丁場のシーズンを見据えたトレーニングの必要性を説いた。

 この日は制服姿で商業施設へ赴き、交通安全などの広報活動も行った。ファンからは「優勝して下さい」といった激励を数多くもらった。「勝負をしなきゃいけない年。キャンプ前に襟を正す機会を与えてもらって感謝です」。前回のリーグ制覇パレードから日本一パレードへのステップアップを胸に秘め、チームを導いていく。【木下大輔】

 ◆栗山監督と栗山町 栗山町が1998年(平10)に観光大使を依頼して就任したのをきっかけに、栗山監督は02年に自費を投じて、両翼70メートルの天然芝野球場を含む「栗の樹ファーム」をつくった。12年の日本ハム監督就任後、同町を表敬訪問した際も“普段着”の上下ジャージーに長靴姿だった。年末年始は16年連続で同町で年越ししており、栗山天満宮で初詣を行っている。

 ◆12年の栗山町パレード 人口約1万3000人の栗山町にファン8000人が駆けつけた。バス乗り場や駅は長蛇の列で、喫茶店、露店は大忙し。パレードは気温マイナス2度の中で行われ、栗山監督は上下ジャージー、ゴム長靴の“普段着”で、自身が10万円で購入した軽トラックの荷台に乗った。紙吹雪は町内の小学生がチラシなどを切って準備、少年野球チームの80人が栗山監督のお面をつけて軽トラックを引っ張った。大感激した栗山監督はパレード終了後、5時間かけて全員と写真撮影を行った。