“鬼”の「不動心」で体を仕上げる。巨人沢村拓一投手(27)が7日、12球団の1軍投手陣(合流前の広島黒田、ソフトバンク・サファテを除く)でオリックス金子と並び、大トリでブルペンに入った。時間にすれば9分58秒。立ち投げで30球投げた。昨年11月19日のプレミア12の準決勝・韓国戦以来のブルペン投球でも、ラスト4球は140キロ超えをマーク。剛腕が動き始めた。

 11時42分、木の花ドームの空気が変わった。無人だったブルペンに、沢村が現れた。異様な緊張感と交錯するように、高ぶる期待感がブルペンを包んだ。第2クール2日目。今キャンプの6日目にして初めて“聖地”に足を踏み入れた。オリックス金子と並んで、12球団で大トリだった。「数えてください」。1球目、乾いたミット音が響き渡った。

 体と対話するかのように、丁寧にモーションに入った。初のブルペンは立ち投げで30球。じっくりと感覚を確かめるように、9分58秒を要した。菅野の8分38秒と比べれば、差は明らかだった。「力んでるなと思ったので、下半身を意識して」。剛腕がのぞいたのはラスト4球。柳ブルペン捕手が「手が痛いよ。140キロは余裕で超えてる」と評した剛速球で締めた。

 調整法は、松井臨時コーチの著書「不動心」そのものだった。キャンプ初日どころか、この日までブルペンに入らず、遠投中心の沢村流調整。周囲がブルペン投球を重ねても、ブレなかった。「自分には自分の調整があります。大事なのはいつ入るのではなく、試合でどう投げるか」と言った。故障なのか? 雑音が聞こえても、我を通した。

 剛腕が見据えるのは、チームの頂点だった。「1年間、投げ抜いて、優勝に貢献する。それしか、頭にないです」と断言した。尾花1軍投手コーチは「遠投でしっかり作ってから。予定通りですよ」と話した。“鬼に剛球”。9回のマウンドに向け、「不動心」で調整を続ける。【久保賢吾】