阪神4年目北條史也内野手(21)の猛打が止まらない。途中出場した6回の第1打席で有原から先制の中前適時打。8回にも左翼フェンス直撃二塁打を放ち、オープン戦打率を5割5分6厘にまで上げた。金本知憲監督(47)は本日のMVPに挙げながら、開幕1軍は明言せず。控えではなく、ファームで主力に育成する計画を検討していることを明かした。

 甲子園でのオープン戦最終戦で白星を運んだのは北條だった。有原を打てず、0-0で迎えた6回2死三塁。途中出場した背番号2が真っすぐを中前にはじき返した。均衡を破る決勝タイムリー。強烈な存在感を示した。

 「ゲッツーのあとでチャンスを潰すと流れが行く。集中していきました」

 北條の一撃で、一気に打線は点火。ヘイグ、ゴメス、福留、横田と5連打となり4得点。金本監督は2安打したヘイグの話題にも「北條君みたいな勝負根性があったら(文句なし)」と無理矢理かぶせて、満足そうにうなずいた。

 「MVPは北條でしょう。あのヒットがゴメスや福留のいい当たりを呼んだようなもの。(福留にも初適時打が出て)一安心したけど、すべて北條君のヒットでしょう」

 中軸の大当たりは北條の活躍抜きに語れない。それほど価値ある一打だった。8回にも白村から左翼フェンス直撃の二塁打で2打数2安打。オープン戦打率を驚異の5割5分6厘まで上げた。もはや開幕1軍は間違いなしか。だが指揮官は思案顔で言った。

 「まだ分からんね。いろいろ(育成)方針もあるし…。育てるという意味で変えていきたい面もある。今から要相談だね」

 結果は申し分ない。だが遊撃に不動の鳥谷がいる以上、開幕後は控えに回るしかない。となれば出番は代打か代走、内野の守備固め…。金本監督は成長著しい21歳の若虎が置かれる境遇を案じていた。2軍でたくさん実戦を積む方が、主力に育てる得策ではないか。中長期的な展望を持った育成計画を検討していることを明かした。

 北條は「僕はずっとアピールしないといけない立場。1打席に集中して、1球も無駄なくと思っています」。たとえ開幕1軍に入っても、4月からの主戦場は鳴尾浜になるかもしれない。それは英才教育を施す“名誉の2軍落ち”だ。それが金本監督が見初めた若虎への育成流儀。北條の独り立ちにも、「超変革」で挑む。【松井清員】