覚せい剤取締法違反(所持、使用)罪で起訴された元プロ野球選手清原和博被告(48)が17日、逮捕から44日ぶりに警視庁本部から保釈された。東京地裁が同日、保釈を許可し、清原被告は保釈保証金500万円を現金で即日納付した。清原被告は警視庁のある霞が関から千葉県松戸市の病院に直行。その間、約1時間半近くにわたり、報道陣のオートバイ、ヘリなどによる大追跡劇が展開された。清原被告はこの日「皆さまを裏切ってしまったことを深く後悔している」などとするコメントを発表した。

 逮捕後初の姿をとらえようと、報道各社が清原被告を追跡した。日刊スポーツ写真部の河野匠カメラマンが迫真の追跡劇をリポートする-。

 わき上がるシャッター音の中、銀色のワゴン車が出てきた。午後6時50分、警視庁前。連続するフラッシュで、車内が昼間のように明るく見えた。だが後部座席はカーテンで覆われ、清原被告の顔は見えない。その車が桜田通りを走り出したのが合図だった。待機していた報道陣のバイクや車が十数台、レースのような排気音を上げながら、スタートした。

 他社の車や帰宅ラッシュの車などに阻まれ、近づけない。ワゴン車までは50メートルほど。これ以上離されたらおしまいだ。

 それでも、法令順守は絶対だ。ドライバーのおかげで食らいつくも、首都高の土橋インター手前の赤信号で見失った。

 この時点で、目的地は分かっていなかった。デスクに連絡を取る。ネットでヘリの中継映像が見られるという。どこだ。映像から頭をひねり、先回りをした。

 向島インターから首都高に上がった。横を見るとワゴン車が追い越していった。ラッキーだ。しかし、下道に降りたところの赤信号で引っかかった。

 もうダメか。だが、なんとしても清原被告の表情を伝えたい。頭上を見るとライトをつけたヘリが2機。地図を見ながら、ヘリの先へ。バイクを引き連れたワゴン車がいた。

 午後8時20分。ワゴン車は松戸市内の病院敷地へ入っていく。カメラを持って車から飛び出したが、赤いテールランプが地下に消えた。最後まで、表情は見えなかった。

 顔を見せて、自分の口から謝罪するタイミングは本当になかったのか。これでは世間に背を向けて逃げたと言われても仕方がない。私は1月に福岡で行われた名球会の取材をした。そこでは子どもたちとにこやかに交流する清原被告の姿があった。もう1度、あの日に戻るためには、しっかりと顔を見せて、自分の言葉で話す必要があったのではないか。むなしさだけが残った。【河野匠】