超変革野球が、苦手ドームの苦手投手をのみ込んだ。阪神が今季初の「伝統の一戦」で宿敵を圧倒。金本知憲監督(48)が巨人高橋監督との新監督対決に先勝した。昨季2勝11敗の東京ドームで、超積極的な走塁を絡めて6回までに8安打8得点。3回の重盗などで得点を重ね、昨季5敗(2勝)を喫したポレダをKOした。

 高山のヒーローインタビューが漏れ聞こえる三塁側ベンチ裏で、金本監督は笑みが絶えなかった。「カード初戦でもあったし、去年5敗した投手に勝てたことが一番大きいですね」。昨年8試合で最高3点しか取れず、2勝5敗と苦手にしたポレダから8点を奪ってKO勝ち。スパイスは、監督就任後から時間を割いてきた「足攻め」による超攻撃野球だった。

 福留の犠飛でリードを2点に広げた3回、なおも1死一、三塁。フルカウントからゴメスが空振り三振したが、ランエンドヒットのサインに一塁走者のヘイグがスチール。捕手小林誠が二塁送球した瞬間、三塁走者横田もスタートを切り、ホームに生還した。昨年までやられるシーンばかりが目立った初の重盗成功で3点差に広げた。金本監督が解説した。

 「スキが多かったから狙っていこうと。弱点なんでね。そこはいかないと」。クイックが得意でないポレダへの足攻めをミーティングで確認し、徹底。6回1死では巨漢ゴメスもモーションを盗み、サインで2年ぶりの盗塁を決めた。「ゴメスもいけると思ったんじゃない。勝手にいってくれました(笑い)」。チーム2年ぶりの1試合3盗塁でリズムを狂わせ、ボークと西岡、高山の適時打2本で4点を加えた。

 「(キャンプでは)まず走塁への意識(改革)から入ったからね。選手は意欲的に次の塁を狙ってくれている。状況判断も含めて野球に対する意識が変わってきている」

 浸透している走塁革命に何度もうなずいた。3回、勝ち越しの口火は藤浪。ゲーム序盤に先発投手が見せた野手顔負けの走塁は、まさに「超変革」だ。「一、三塁を作ったのは大きかったし、素晴らしい状況判断。いいスライディングもしてくれた。投手も走者になることがあるし、やってきた成果が出たね」。ハイタッチの列でも真っ先に「ナイス走塁!」とたたえた。

 昨季9つもの負け越しを喫した鬼門がウソのようだ。第1ラウンドを制し、巨人に0・5ゲーム差。「明日も全力でね。目の前にあるゲームを全集中力を出して勝ちに行く。それだけです」。昨季1勝3敗と苦手にした菅野も攻略できれば、昨年9月12日以来、金本阪神では初の首位に立つ。【松井清員】