緊張で少し足が震えたが、九州男児は自らを奮い立たせた。2-2の延長10回1死満塁。ロッテ高浜卓也内野手(26)は「なんとかバットに当てよう」と決意した。直球を2つ見逃した後の3球目、日本ハム増井の甘いフォークを引っ張った。右前にライナーで運ぶ決勝打。球が速い増井に対し、あえて変化球を待った。「直球を狙って、低めの変化球を空振ることがあった。変化球に懸けました」と狙いが当たった。

 プロ9年目で開幕スタメンを勝ち取ったが、3試合でベンチに逆戻り。復調のきっかけは、伊東監督がくれた。タイミングを取るのが遅いと指摘された。今カード初戦の15日にプロ初本塁打。右翼方向への強い打球を取り戻した。記念球はファンの好意で手元に戻った。佐賀の両親に贈るつもりだが、前日16日「ホームランどころじゃないです」と浮かぬ顔で打ち明けた。

 熊本地震で佐賀市の実家も大きく揺れた。被害が広がっている大分にも親戚がおり、心配は尽きない。ただ、初アーチを地元の友人たちが喜んでくれた。「連絡をくれて。僕の方が勇気づけられました。打って、みんなを元気づけられたら」と思いを口にした。

 連敗を2で止めた伊東監督は「延長で脇役が貢献してくれた」。現役時、佐賀の武雄温泉で自主トレしていた。「佐賀の良さは行かないと分からない」と話す指揮官を、佐賀出身の高浜が喜ばせた。出場停止中のナバーロが23日に復帰。内野争いは激しくなるが、高浜は「ナバーロが出られないくらい頑張りたい」と熱かった。【古川真弥】