これがエースの凄(すご)みだ。ロッテ涌井秀章投手(29)が日本ハムを無四球で7回2失点に抑え、自身初の開幕5連勝を飾った。逆転した6回には最速149キロをマークして3者凡退に抑え、勝利への流れを呼び込んだ。再三のピンチで迎えた主砲中田も3打席凡退。勝負どころを支配し、チームを3連勝に導き、首位ソフトバンクにゲーム差なしと迫った。

 鬼気迫る投球だった。味方打線が逆転に成功して迎えた6回。ロッテ涌井は100球を超えた109球目に、この日最速の149キロを記録した。次の148キロ速球でレアードを空振り三振に仕留め、3者凡退に切った。「しっかり3人で抑えれば流れは来ると思って力を入れました」と、勝敗のポイントに挙げた。試合中にギアチェンジできるのは、勝負どころが分かるから。再三のピンチで迎えた中田も3打席凡退に封じた。

 最後のピンチは我慢比べだった。7回2死二塁では粘りの中島に対し直球で押した。11球中で変化球は1球だけ。8球もファウルされたが、最後も内角148キロ速球を投げ込む。見逃し三振に仕留めると大声を上げながらグラブをたたいた。「打たれているときは外の変化球。内角直球なら頭を越されることはないし、打たれてもしょうがない」と、開き直れるのもエースの底力だ。

 修正能力も高い。試合中はもちろん、登板間も同様だ。前々回は直球がシュート回転していたのを前回登板で修正し、この日は進化していた。ローテーションの間隔は5日でも、6日になっても大丈夫。雨で2日スライドしても動じない。落合投手コーチは「涌井だからできること」と、不安定な日程でも頼りにする。最大13メートルの強風で中堅ポールのこいのぼりが吹き飛ばされたほどだったが、伊東監督は「こんな状況の中でも抑えるのがエース。よく粘ってくれた」と、あらためて信頼感を深めていた。

 23日のオリックス戦では開幕から5戦5勝の記録を西野が同点に追いつかれ逃したが、「そんなことは2回や3回はあること」と気にしなかった。仕切り直して自身初の開幕5連勝。「このまま負けなければいいな、とちょっとだけ願ってます」。ポーカーフェースが本音をポロリとこぼした。【矢後洋一】

 ▼涌井が両リーグトップの5勝目。西武時代の07年に開幕から4連勝している涌井だが、無傷の5連勝は初めて。4月中に5勝目を挙げたのも自身初めてで、ロッテでは03年清水直以来、13年ぶりになる。この日は0-2から逆転勝ち。涌井は1日オリックス戦、7日ソフトバンク戦、14日楽天戦、29日日本ハム戦と、5勝のうち4勝は相手に先取点を許しながら逆転で白星を手にしている。