広島小窪哲也内野手(31)が先制の決勝適時打を放った。2回1死三塁から、巨人内海のツーシームを右前に運んだ。選手会長の意地の一打から打線がつながり、終わってみれば12安打6得点の大勝。連勝で貯金を5とし、首位をキープした。いい流れを引き寄せ、連勝街道に導く。

 主砲が打って、若武者がつないだ好機に燃えないはずがない。小窪は打席前にジャンプして股割りするルーティンをこなし、バットを巨人内海の方に向けた。鋭い眼光で、冷静に。2ボールからの3球目だった。外角のツーシームに踏み込んで、バットをしならせた。歓声とうねりを生んだスタンドをバックに、鋭い打球が一、二塁間を割った。

 「(鈴木)誠也が進塁打を打ってくれた。なんとか先制したいと思った。しっかり何を打つか考えて、打席に入れました」

 小窪の携帯電話に、1通のメールが保護されている。「俺はこんなことを言う立場ではないけど、このチームはお前が必要だ。お前が引っ張れ。結果を残してすぐに帰ってこい」。未登録の送信元は黒田からだった。3月13日、オープン戦で結果が残せず、2軍行きを告げられた日に送られてきた。連絡先を調べてまで送ってくれた。「言葉に出来ないくらいうれしかった」。しばらくの間、携帯電話を握りしめていた。

 「引っ張る、まとめる。そう言われるけど。黒田さんも、新井さんも石原さんもみんな協力してくれる。絶対に勝ちたい」

 結果が出なくて苦しくても「俺がそれを見せたらダメ」と感情の起伏を封印。「選手会長」として歯を食いしばった。徐々に復調すると、勝負強さも戻ってきた。そして放った決勝適時打。何よりベンチは握り拳を小窪に突き出し、1つになっていた。2打席目も左前打で続いた。

 小窪の一打から打線がつながり、チームは12安打6得点。貯金を最多タイの5として首位をキープした。緒方監督も「効果的に得点出来たね」と評価。小窪は最後「1試合ずつ出来ることをやるだけです」と締めた。支え、支えられ。広島は一枚岩で向かっていく。【池本泰尚】