サムライが戻ってきた。オリックス先発の松葉貴大投手(25)が8回2安打1失点で2勝目を挙げた。初完投は逃したものの、ビシエドのソロ本塁打のみに抑えるほぼ完璧な内容。なかなか勝ちきれない先発陣の中で、途中からローテ定着して安定感が光っている。かつて日本代表「侍ジャパン」に選出された左腕が進化を遂げて復活した。

 5時間13分の両リーグ最長試合から一夜明け、2時間22分のオリックス今季最短試合が待っていた。スピーディーな展開の主人公は、松葉だ。序盤こそ球数を要したものの6回以降の3イニングは31球。スイスイと勝負どころを切り抜け、平野にバトンを託した。

 「全体通して見たらすごく良かった。ここまで先発での5、6試合はずっと調子がいい。ホームでなかなか勝てなかった。やっと勝てて良かった」。今季1勝は秋田の楽天戦だった。京セラドーム大阪では自身2年ぶり白星。チームの同球場6連敗もストップさせた。負ければ自力優勝が再消滅のピンチを救った。

 4月下旬に先発ローテに固定され、6戦連続で5回以上と安定感が光る。福良監督も「この3試合くらい見ていたら、一皮むけた感じがする」。その要因は直球だ。中日打線を押し込んだ。松葉自身も「一番自信のある真っすぐが良かった」と、プロ最多129球を振り返った。

 2桁勝利を目標にして迎えた春先、不振に陥った。直球に力がなかった。キャンプ紅白戦で味方に投げても「本当に力を入れてるか?」と言われるありさま。そこで体重移動を見直した。「ボールを持たず、シャドーピッチングに近い練習で体の使い方を思い出していった。4月中旬、一番いい状態のときに1軍に呼んでもらった」と1、2軍の首脳陣に感謝する。

 大体大で投手に再転向し、外れ外れの1位で入団した雑草左腕。昨年3月の日本-欧州代表に先発も3回5失点の悪夢から下降線をたどった。1年以上かかって、球威とともに自信が戻った。「これからもどんどん勝っていきたい」と力強く宣言した。【大池和幸】