珍しいシーンが中継画面で大写しになった。8回裏が始まる前、ロッテ石川歩投手(28)がベンチ内からブルペンに電話をしている姿だ。3点差だったため、9回は抑えの西野が準備していた。伊東監督が「直訴。自分から行かせてくれと。それで投手コーチが自分で電話するように言ったんだ」と、内幕を明かした。

 石川は自分を前面に押し出すタイプではない。「雅さん(ブルペン担当の小林投手コーチ)に行きますと言いました。あまり触れないでください」と恥ずかしそうに話した。9回は2死二、三塁のピンチを背負ったが、大城を143キロ直球で右飛に抑え昨年6月30日以来の完封につなげた。自身7連勝でソフトバンク和田に並ぶハーラーと防御率の2冠でトップに立った。

 決め球のシンカーはことごとく打たれた。伊東監督から使うなと指示を受け、カーブを多めに配し持ちこたえた。ヒーローインタビューでは「疲れました」を3回、試合後の取材では「奇跡です」を2回も口にした。夏場は苦手だが、ランニングはスピード系を増やして体に切れをつけた。糸井から見逃し三振を2つ奪う直球の切れにつながった。

 落合投手コーチとの約束もまっとうした。開幕前に「前半戦で9勝」と言われた。週1回投げればおよそ15試合に登板するから2勝1敗ペース。それを聞いたときには無理だと思ったがたどりついた。あと1つ勝てば新人から3年連続2ケタ勝利で球団初の快挙になる。涌井とのダブルエースの責任も果たした。試合前にセットアッパー内が右肘痛のため抹消された。ブルペンにかかる負担を完投という形で救った。

 じわじわとソフトバンクとの差が7に縮まった。伊東監督は「福岡で2つやられているからそんな気持ちはしない。だけどもう1回立て直して挑戦権を得られるように目先の試合にこだわっていく」と気合を入れ直した。【矢後洋一】