狙った本塁打だった。DeNA筒香嘉智外野手(24)は9回1死走者なし、甘い球が来るのを待っていた。「狙ってました。1発で決まる場面だったので」。失投を逃さない。ヤクルト秋吉の、ど真ん中に来たスライダーを右中間スタンド中段まで運んだ。昨年の自己最多24号に、89試合目にして並ぶ一撃。ラミレス監督からも「4番の仕事をしてくれた。NO・1の4番だと思う」と最敬礼された。

 この日は3回にも3秒でスタンドまで届く弾丸ライナーの23号ソロを放った。今季5度目の複数本塁打だ。だが、ここまでになるのは一朝一夕ではなかった。「今年、急にできるようになったのではなく、積み上げたもの」と筒香。11年12月に初めて米国・ロサンゼルスに自主トレに行った。「モノになるのに3年か5年かかる」と言われながらも、愚直にやり抜いた成果が今、出ている。「反対方向にインサイドアウト。前に突っ込まないように軸で打つ。体の中の方の感覚を大事にすること。その感覚が求めるものに近づいてきている。まだまだですけどね」と、大事にしてきたことをあらためて説明した。

 そんなコツコツ努力の人、筒香が「僕の中では信じられないです」と絶賛したのが横浜高の後輩、万波だった。本拠地・横浜スタジアムのバックスクリーン上部にあるコカ・コーラの看板に打球を当てたと伝え聞いた。「僕は、横浜高校への思いは強いです。けっこう結果を気にしていますよ。あの1年生の子、すごいですね」。後輩の活躍が刺激に、今日もチームの勝利のため、最高の4番と化す。【竹内智信】

 ▼筒香が23、24号。1試合2本塁打以上は今季5度目となり、7月だけで3日広島戦、12日中日戦に次いで3度目。セ・リーグでマルチ本塁打の月間最多記録は76年5月ブリーデン(阪神)の5度だが、DeNAで月間3度は87年5月ポンセ、03年9月ウッズ、05年5月多村に並ぶ球団タイ記録だ。