ベテランの一振りが、チームの連敗を6で止めた。ロッテ井口資仁内野手(41)が0-2の6回、逆転の4号満塁本塁打を放った。代わったばかりの西武大石の第1ストライクを逃さなかった。41歳7カ月での満塁弾は、74年アルトマン(41歳0カ月)を抜き球団最年長記録。通算打点は998となり、大台目前だ。

 右腕を突き上げた姿は完璧だった。地鳴りを浴び、井口は一塁をゆっくり蹴った。「この何試合か、打線がカバーできてなかった。良い形で打てた」と満足げに振り返る。0-2の6回1死満塁。「最低でも犠飛」と思ったが、代わったばかりの西武大石はボールを2つ続けた。「バッティングカウント。ストレート1本」と定め、その通り144キロを砕いた。連敗中のチームは序盤にミスが続いていた。左翼席への弾道が重い空気を切り裂き、12日ぶりの勝利をもたらした。

 日米通算20年目。経験で、冷静に見ていた。開幕から投打がかみ合い「逆転のロッテ」と呼ばれた。だが、前半戦終盤に失速。後半初戦の前日も振るわなかった。「つながりがうちの持ち味だけど、こういう時は、どうしても球を見がちになる」。黒星と消極の負のスパイラル。大石の第1ストライクを捉え、お手本を示した。「これで吹っ切れる」。満塁弾に続けとばかり、終盤は打線がつながり加点。本来の形が戻った。

 猛暑の夏。母校の活躍を楽しみにしている。国学院久我山は西東京大会ベスト8進出。明日21日、第1シードの東海大菅生に挑む。「いつも、ここまでは来るんです」と、自らが2年生の時に出場した91年以来の夏の甲子園出場を願う。そんな41歳は、元気の理由を「この位置(3位)にいるから。上を向いていける。残り少ない野球人生。何回でも優勝したい」と力強く挙げた。伊東監督が「困った時はベテランの力。チームを救った」と絶賛する男は、逆転優勝を本気で考えている。【古川真弥】

 ▼41歳7カ月の井口が満塁本塁打。満塁本塁打の最年長記録は94年大島(日本ハム)の43歳6カ月。井口は5番目の年長記録で、ロッテでは74年アルトマンの41歳0カ月を抜いて球団最年長満塁弾となった。井口の満塁本塁打は13年8月22日西武戦でこの日と同じ大石から打って以来13本目(他にメジャーで2本)。通算13本は歴代5位タイとなり、パ・リーグで13本は中村紀に並び3位タイに進出した。