勝てぬなら、歌ってしまえ「六甲おろし」。もはや豊臣秀吉の心境か、拙攻続きで巨人戦3連敗が決まりかけた9回裏、甲子園のスタンドはやけくそ気味に「六甲おろし」を合唱した。一方的な敗戦で、甲子園での伝統の一戦は開幕から6敗1分けで7戦未勝利のまま。6番北條が5回1死満塁で三ゴロ併殺に倒れるなどブレーキで、3併殺8残塁の拙攻が極まった。

 「ろっこう、おろし~にさっそうと」

 試合中にもかかわらず、ライトスタンドから六甲おろしの大合唱が始まった。5点も負けている9回、先頭中谷の打席。あまりにもふがいない完敗モードに、ファンもやけくそ気味…。81年の球団史でもこんな光景があっただろうか。3番まで歌い終わったタイミングで中谷は凡退。続く代打狩野が意地の1発を放ったが、甲子園にやじと怒号が渦巻き、メガホンも投げ込まれる物々しい試合終了になった。

 本来なら勝って歌う勝利の凱歌(がいか)。だが後半開幕戦で宿敵に3連敗し、甲子園の巨人戦は7戦で1分け6敗。開幕から7戦未勝利は87年と91年に並ぶ球団ワーストで、阪神ファンのフラストレーションが爆発。悲痛な思いを実感した金本監督は「そうよね、なかなか…。ファンを喜ばせてあげたいけど」と懸命に言葉を探すしかなかった。3連戦前は「選手は気持ちよく、六甲おろしを歌わせてあげるようにしないと」と鼓舞していた。6月28日のDeNA戦を最後に、甲子園の試合自体が7連敗だ。

 打開策は講じた。今季3戦3敗だった田口に対し、不振のゴメスを外して原口を一塁起用。だが巨人を上回る8安打を放ちながら、またあと1本が出ない。1回2死満塁の北條の捕邪飛も痛かったが、3回から3イニング連続併殺も痛かった。3回無死一、二塁は原口が二ゴロ併殺。4回1死一、二塁は大和の一直に青柳が飛び出し、5回1死満塁では北條の強烈な三ゴロが併殺に仕留められた。

 金本監督 いい当たりが全部正面を突いた。大和は粘ってファーストライナー。あれが抜けていれば大違いだったし、北條の当たりもほぼ完璧だったから。いい当たりが正面を突いたのと、村田のポテンヒットが決勝点になった。今日はその差かな。

 球運にも見放され、8残塁の拙攻。借金はワーストの13まで膨らみ、明日22日からは敵地で首位広島3連戦とさらなる試練…。何より、甲子園で巨人にリベンジしたくても、次の戦いは9月までない。勝って歌う本物の六甲おろしが、秋風の合唱にならないことを願うしかない。【松井清員】

 ▼阪神の後半戦3連敗スタートは、12年の4連敗以来4年ぶり。このときは中日●●、DeNA●●○。同一カード3連戦3連敗スタートは、06年中日戦(ナゴヤドーム)以来10年ぶり。後半戦開幕カードが巨人戦3連戦3連敗は、90年(甲子園)以来26年ぶりとなった。