6年目の阪神島本がわずか1球でプロ初勝利を手にした。先発メッセンジャーの後を受けて1点を追う5回2死一、二塁の場面で登板。3番丸を初球の変化球で一ゴロに仕留めた。直後の6回に打線が5安打3得点を挙げて逆転。そのままチームが勝利して念願の勝ちが付いた。「1球プロ初勝利」は阪神でははじめての“珍事”だ。

 だが、試合後の島本はなぜか苦笑い。試合直後にベンチで指摘されるまで勝利投手と事実を知らなかったからだ。そのためウイニングボールを手にすることはできず。「もらってないです。(勝利球は)返ってこなかった。(周囲も)自分が勝利投手ということを分からなかったんじゃないですかね」と笑うしかなかった。

 それでも負の流れを断ちきり、チームに流れを呼び込んだのは紛れもなく島本だ。「ピンチでしたけど、自分にとってはチャンスだと思った。ここで抑えたら言いアピールになると思った。うれしいですね。こういうピッチングを続けていきたい」と喜んだ。

 シンデレラボーイ原口と同じように、2軍で力を蓄えてはい上がった。10年育成ドラフト2位で阪神入団し、14年11月に支配下登録された。あこがれ続けた1軍でプロ1勝。球団にとっても、育成ドラフトで指名した選手の1軍勝利は初めて。超変革のスローガンのもと、また1人、若虎がプロ人生の節目を迎えた。【桝井聡】

 ▼1球勝利=島本(阪神) 24日の広島18回戦(マツダスタジアム)で記録。今年の6月25日金刃(楽天)以来40人、41度目。阪神では93年10月21日弓長、00年8月3日葛西、14年7月22日金田に次いで4人目。プロ初勝利が1球勝利は14年8月30日横山(楽天)以来7人目となり、阪神では初めてのケース。