楽天のエースが球団史に新たな記録を刻んだ。則本昂大投手(25)が今季最多タイの12奪三振で10勝目。球団初の新人から4年連続2桁勝利を達成した。「野手の方が点を取ってくれたおかげです。この1勝はまだ通過点。シーズンは続きますから」。7回5安打3失点、5四死球の内容に反省を忘れなかった。

 ベストでなくても結果を出す、真骨頂の投球だった。初回に3四球が絡み2失点。だが裏の攻撃で味方が同点に追いつくと、全力を振り絞り降板直前の6回まで追加点を許さなかった。「今年の打線は踏ん張っていれば必ず何とかしてくれる」。思いは通じ、4回の島内の満塁弾で歓喜した。

 入団から4年で49勝目を挙げてもなお、自分をエースと認めたことがない。「まだまだです。投げた試合でチームが勝つことが一番大事で、それを重ねられる投手がエースと呼ばれていく。僕はそこまで達してない。もっと成長しなければ」。個人の記録に強い興味はない。勝利を呼び、チームの順位を上げることにだけ関心がある。「ここ2年は負けも2桁で、2年連続最下位の責任を感じている。ただ2桁勝てばいいわけではない」と繰り返した。

 本人の感覚とは裏腹に、周囲は頼もしい背中にエースとしての信頼感を感じ取る。梨田監督は「無事これ名馬で投げ続けてくれ、試合中の修正能力も高い。本当にありがたい」と最敬礼する。3位ロッテを大逆転してのCS進出へ。則本は「今後どれだけチームの勝ちを伸ばせるかで真価が問われる。続けたい」と力を込めた。【松本岳志】