日本ハムが大谷翔平投手(22)の速攻先制打で、再び首位に肉薄した。初回、1死二塁で大谷が、ロッテ先発スタンリッジから右前へ先制適時打。大谷の3戦連続となる先制打から、一気に4点を奪い勝負を決めた。貯金は今季最多タイの26。首位ソフトバンクが敗れたため、ゲーム差は再びマイナス0・5、勝率は1厘差まで最接近した。首位奪取がいよいよ秒読みに入った。

 技が光った。膝元に食い込む140キロのスライダーに、大谷は腕をコンパクトにたたんだ。バットを合わせ、最後は右手一本で振り抜いた。1回1死二塁。一、二塁間を破る技ありの一打が、貴重な先制点を生んだ。「うまく打てました。基本的にはしっかり振って長打を打ちたいと思っている。あんまりやりたいことではないけど、それはしょうがない。二塁に走者もいたので」。巧みなバットコントロールは超一流の技術。それをやや不満げに振り返る姿は、底知れない能力の証しでもあった。

 大谷のバットが「先制得点源」になっている。20、21日のソフトバンク戦に続き、3試合連続で初回に打点を挙げた。安打も9試合連続と途切れない。「いいところで1本出ているんじゃないかと思います」と自画自賛した。QVCマリンフィールドは今季10試合目。ここまで3勝6敗と苦手としていたが、大谷の一打で流れを引き寄せ、嫌なイメージを払拭(ふっしょく)した。

 バスに乗り込む大谷は、右肩、ひじに氷嚢(ひょうのう)を巻いていた。試合前にはブルペンで、約50球を投げた。中指のマメがつぶれた7月10日ロッテ戦から、すでに1カ月半が経過した。同24日オリックス戦で1イニングの中継ぎ登板はあったが、「投手・大谷」の足踏みは続いている。

 栗山監督は先週、大谷本人と話し合いの場を持ったことを明かした。詳細は伏せたが「ちゃんとやるべきことをやりましょうということ」。開幕前、2人で誓った今季の目標は、投打両方で結果を残すこと。打撃で大きな貢献をしていることは認めているが、二刀流をこなす選手として、投球がおろそかになってはいけない。現状に停滞しないよう、手綱を引き締めた。

 この日で野手25試合連続出場。二刀流4年目で初めてのこと。同監督は「まだ経験したことがないことがいくつかある。その中のひとつ」。投手として苦しんでいる現状も、さらに進化する過程ととらえている。

 残り30試合。首位ソフトバンクとのゲーム差は、再び「マイナス0・5」の珍現象。今日24日ロッテ戦(QVCマリン)で奪首の可能性もある。「2回以降もっと点が取れればよかった」。あくまで悔しそうに振り返る大谷の目は、もっと上を向いている。【本間翼】