サブマリンのごとく潜行してきたが、5連勝でCS圏内へ一気に浮上した。ヤクルトの「虎キラー」こと山中浩史投手(30)が、9回7安打1失点で今季3度目の完投勝利。6勝のうち3勝が阪神戦という相性の良さで、チームを今季2度目の大型連勝に導いた。3位DeNAとの2・5ゲーム差を死守し、残り21試合で逆転Aクラス入りを狙う。

 最後も、フライアウトだった。2点リードの9回2死二塁。ヤクルト山中は原口を緩い外角カーブで中飛に片付けた。27アウト中、17個が飛球。面白いように打球を上げさせた。「球は浮いていたんですが、要所で低めに集めて、打ち気を外すことができた」と、打者によって投球モーションの緩急をつけて幻惑。8回以外は毎回走者の展開ながら、120キロ台の直球と110キロ台のカーブ、スライダーの“遅球”でかわした。

 “参考書”が生きた。交流戦中のこと。日刊スポーツに目がとまった。同じサブマリン西武牧田の投球フォームを解説していた。一連の投球動作を連続写真で掲載。スクラップし、自宅に保管した。「特に下半身の使い方で悩んでいた」と日課のように読み込んだ。「お尻に力を入れ、リリースに伝える。どこまで下半身で踏ん張ればいいのか、そういう部分が勉強になった」。同時に「球界一速い投球テンポ」と呼ばれる、間も参考にした。「間が空きすぎると、相手に考える余裕を与えてしまう」と、リズムを意識した。

 必由館高(熊本)の後輩・岩貞との投げ合いを制し、阪神相手に4戦3勝。同校野球部の西田尚巳監督(51)も観戦に訪れていた。試合前、甲子園に到着すると、関西遠征中だった高校2年夏の出来事を思い返した。甲子園に向かう電車に乗ろうとした際に、「切符をどこに通していいのか、分からなかった。初めての自動改札機。地元の天草は、切符を駅員に直接渡すから」と赤面した。ほろ苦い記憶が残る地でも、虎キラーは健在だった。

 チームは5連勝。3位DeNAとは2・5ゲーム差のままだが、破竹の勢いで30日巨人戦(福井)に向かう。残り21試合。真中監督は「勢いを付けて、来週から戦っていきたい」と言葉に力を込めた。逆転CSへ、勝ち続ける。【栗田尚樹】