打たれたけど堂々の日本記録更新だ! 日本ハム大谷翔平投手(22)が、自身が持つ日本最速記録を1キロ上回る164キロを投じた。3回、糸井に投じた剛速球は2点適時打にされたものの、右中指のマメをつぶしたことに端を発した離脱から復帰2戦目で完全復活を印象付けた。5回2失点で勝敗はつかなかったが、チームは勝利して2位ソフトバンクに1ゲーム差をつけた。大谷は次回、21日の直接対決(ヤフオクドーム)で先発する見込みだ。

 球史に刻まれる快速球は、大谷の心に悔しさを残した。3回1死二、三塁。外角を狙ったオリックス糸井への初球を、内角に制球ミスした。日本球界最速記録を更新する164キロ。詰まった打球は、右前へポトリと落ちた。先制の2点を失った。「逆球だったので…。イメージした通りではなかったです」。球速表示も見なかった。知ったのは、5回にマウンドを降りてから。「(聞いても)何も思わなかったです。そこがよかった悪かったで(勝敗が)決まるわけではないので」。チームの逆転勝ちに救われたが、不本意なメモリアルになった。

 右手中指のマメをつぶしたことを契機に、投手として離脱した。風呂でもふやけやすいという大谷の指は、マメができやすく、160キロを超える投球が続けば指先にかかる負担も大きくなる。疲労などでフォームのバランスが崩れると、負荷が掛かるポイントが一定せず、それによって皮がむける。保湿クリームを塗るなど丁寧にケアはするようになったが、首脳陣は理想のフォームに戻すことを最優先に考え、1カ月半もの間ローテから外した。DH出場を続ける一方、1日置きにブルペン入りするキャンプのような日々を送った。

 苦労、努力、忍耐は、実った。安定した投球フォームで復活を遂げた。これが球速アップにも一役買った。この日投じた直球は47球。その半分近くに及ぶ22球が160キロを超えた。「そこ(直球)を中心に自分の投球は成り立っている」。この日、決め球に選択したスライダーも生きた。5回4安打2失点。15個のアウトのうち、9つを三振で奪った。ヤンキース、マリナーズなど、大挙詰めかけたメジャースカウトたちも、歴史の証人になった。

 球数制限が解除される次回登板は、21日ソフトバンクとの直接対決。「調整をしっかりして、次の登板で結果を出したいです」。優勝の行方を左右する大一番。完全復活の舞台としては、これ以上ない。【本間翼】

 ◆今季メジャーでは アロルディス・チャプマン(カブス)がヤンキースに在籍していた7月18日、オリオールズ戦で現行の計測システムでは大リーグ最速タイとなる105・1マイル(約169キロ)をマークした。