ソフトバンクの悲願の3連覇の可能性は、首の皮一枚、残った。決勝点は執念で奪い取った。千賀の3連続四球などで同点に追いつかれた直後。9回は江川が死球で出塁すると、代走城所が出動。初球にいきなり盗塁成功。その後、1死一、三塁となり、1番福田に工藤監督は代打を考えなかった。ベンチに呼び、言った。「1球目だけは構えろ」。初球がボールになり、カウントを整えた。カウント1-1からスクイズのサイン。一塁方向に転がり、城所が生還した。

 スコアボードには日本ハムの試合結果が表示されていた。1敗すれば、ペナントレースが終わる。「本当にしびれた。絶対に失敗できない状況で、決められてよかった。負けて、優勝させるわけにはいかなかった」。福田は大役を果たし、ホッとした表情を見せた。

 試合前には今季を象徴するアクシデントが発生していた。守りの要である今宮が右肘痛のため、練習を不参加。プレーボールを待たずに、福岡への帰路に就いた。柳田の骨折や和田の左肘痛など、今季は相次ぐ負傷者に悩まされている。日本ハムがマジック1とした状況でも、追い打ちをかけるような離脱だった。しかも完封ペースの千賀が8回に突然の乱調。苦しみ抜いた末の勝利だった。

 工藤監督も「一塁がファーストベースから外れていたので、セーフティーは警戒されていた。やるなら、スクイズ。ドキドキした。(城所も)思いが走塁に出た」と、少しだけ表情を緩めた。残り3試合。絶対的不利は変わらないが、この日の執念があれば、奇跡を起こせるかもしれない。【田口真一郎】