プレーバック日刊スポーツ! 過去の10月22日付紙面を振り返ります。1991年の2面(東京版)は広島佐々岡真司投手が沢村賞初受賞を報じています。

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 沢村賞選考委員会は21日、都内のホテルで開かれ、今年の受賞者に広島の佐々岡真司投手(24)を選んだ。同投手は初受賞で、広島からは大野以来3年ぶり5人目(6度目)。表彰式は31日で賞金300万円などが贈られる。

選考対象となったのは先発完投タイプで15勝以上を挙げたセ、パの8人。このうち最多勝と最優秀防御率に輝いた佐々岡と、昨年ルーキー受賞した野茂(近鉄)が最終選考に残り、リーグ優勝への貢献度が高く評価された佐々岡の受賞が決まった。選考委員会の別所毅彦座長は「(佐々岡は)どのチームからも満遍なく勝った印象が強い。全員一致で選んだ」と選考理由を説明した。沢村賞は故沢村栄治投手(巨人)を記念して設けられた賞で、選考委員はプロ野球OBの別所、稲尾和久、杉下茂、米田哲也、堀内恒夫(新任)の5氏。

朗報を耳にした佐々岡には喜びより、驚きの方が先だった。「正直言ってビックリしています。全然考えてもみなかった賞ですから。ピッチャーとして名誉あるものですね」。まるでキツネにでもつままれたような表情で喜びを口にしていた。

広島球場内でのインタビューを終えた佐々岡はそのままダッシュして、ケージ後ろで打撃練習に目を光らせる山本監督の元に走り寄った。受賞のニュースを伝えると、山本監督も「おめでとう」と、わが事のように喜んでくれた。「ありがとうございます」。佐々岡にとっては、監督の言葉が何よりうれしかったようだ。

2年目となった今季のペナントでは最多勝(17勝9敗)最優秀防御率(2・44)の2冠に輝き、チーム優勝の立役者となった。その活躍を「昨年、新人王になれなかった悔しさをぶつけたから」と分析した。そして「すごい賞をとれたのは優勝に貢献できたからかな。選んでいただいた方に感謝するだけです」と付け加えた。

そんな佐々岡が唯一気にするのが、日本シリーズ初戦の敗戦だ。「勝っていれば、もっと堂々とここに出てこられたと思う。こんないい賞をもらったのだから次はいい形で勝ちたい」。予想される明日23日の登板での汚名返上を誓っていた。

◆沢村賞とは

 1947年(昭22)、戦前の大投手・沢村栄治(巨人)の偉業を記念して制定された。50年から88年はセ・リーグの投手だけ、89年以降はセ、パ両リーグの投手が対象になった。59年までは記者投票によって選出された。選考基準は、(1)15勝以上(2)25試合以上(3)200イニング以上(4)完投10以上(5)奪三振150以上(6)勝率6割以上(7)防御率2・50以下、の7項目。

※記録と表記は当時のもの