巨人の金の卵は“6拍子”そろった逸材だった。ドラフト1位指名された中京学院大・吉川尚輝内野手(4年=中京)が21日、快足で「ドラ1」の実力を証明した。この日は東海地区大学野球秋季選手権大会に臨み、皇学館大と対戦。6回に三盗を決め、一時同点のホームを踏んだ。走攻守3拍子は折り紙付き。視察した担当スカウトからは、さらに3つの能力も絶賛された。

 警戒度MAXの中、吉川は相手バッテリーの包囲網を突破した。1点ビハインドの6回2死二塁、再三のけん制球にも動じず、5球目にスタート。捕手が送球をあきらめる抜群のタイミングで三盗を決めた。直後、影山の右前適時打で一時同点のホームを踏んだ。「投げた瞬間に走った。いい走塁ができた」と納得の表情だった。

 緻密に計算された中でスタートを切った。成功の理由は50メートル走5秒7の俊足だけでなく、研ぎ澄まされた五感もその1つだった。ベンチ、塁上から投手、捕手の動きをチェック。「捕手が捕球した後、際どい時は(ストライクをアピールするため)動きが固まる癖がある」と特徴をつかみ、「けん制でマークされていたので、変化球を投げるのを測りながら」最高難度の三盗を成功させた。

 「神走塁」の後継者として、期待がかかる。代走のスペシャリストだった鈴木が現役を引退。今季、チーム唯一の三盗を成功させた男がチームを去った。巨人の今季盗塁数はリーグ4位(12球団で9位)。シーズンを通じ、坂本、阿部ら主軸以外の貧打に泣いたが、吉川の機動力は新たな武器となる可能性を秘める。

 視察した担当の藤本スカウトは、“6拍子”そろった実力を評価した。大学NO・1野手の呼び声も高く、全国の舞台でも証明した走攻守3拍子は折り紙付きだが、同スカウトは「野球センス、身体能力の高さ、野球勘の良さ」と“3拍子”加えた。

 この日、チームは敗れ、大学野球生活が終わりを告げた。「あっという間の4年間だった。負けて悔しいですが、プロでは盗塁王であったり、ゴールデングラブ賞を取れるような選手になりたいです」。高橋監督から打倒坂本を期待される金の卵は、新たな舞台での夢を描いた。【久保賢吾】