まさかの3失点…。「8番投手」で先発した日本ハム大谷翔平投手(22)が、6回3失点で勝利に導けなかった。2回に重盗で先制点を献上すると、4回には松山、エルドレッドに1イニング2被弾。雨の中、最速158キロで11三振を奪い、打撃でも2安打を放ったが、投打で出場のリアル二刀流で今季初黒星を喫した。

 視線の先で「赤」が揺れた。大谷の最大の武器・直球は、真っ赤な背景に吸い込まれた。4回、先頭の松山に続き、エルドレッドの打球もスタンドに消えた。2年半ぶりとなる1イニング2被弾の屈辱。「ファウルを取りにいったけど、どっちも甘かった。投げ損じをしっかり打たれました」。6回5安打3失点。初めて踏んだ日本シリーズのマウンドは、悔しさが詰まっていた。「もう今日のようなふがいない投球はしたくない」。打席にも立つリアル二刀流。今季10戦目で、初めての敗戦だった。

 最速は158キロ。165キロをマークし、前にすら飛ばなかったCSのときの球威とは違った。3年ぶり2度目のマツダスタジアムでの登板。さらに雨が降り続くコンディション不良も重なった。「蹴りも甘くて、しっかり体重が乗っていなかった」。前日までの練習で土質や傾斜の確認は済ませていたが、水分を含んだこの日の状態に対応することができなかった。

 先制点も自らのミス。2回に重盗を決められて失点したが、サインプレーを徹底することができなかった。「防げる点。もったいなかったです」。9月21日ソフトバンク戦以来、22イニングぶりの失点。降板する6回まで毎回の11三振。それでも栗山監督は「いつもより悪かった。本人も悔しかったと思う」と振り返った。

 だが明るい要素もある。今日23日の第2戦(マツダスタジアム)は代打待機の見込みで、本拠地に戻る3戦目以降も打者として出場する。2回には左中間フェンス直撃の二塁打を放ち、日本シリーズ初打席初安打を記録。7回にも内野安打で複数安打をマークし、バットでの存在感は光った。投手としてやり返したい思いは、少しの間だけ封印する。「もちろんそれ(次回いい投球をしたい思い)はあるけど、ここから4連勝で、僕が投げないで勝った方がいいです」と、スイッチを切り替えた。

 打線は相手を上回る10安打。「打っているし、紙一重。悲観するところは多くはないと思います。まず明日、打者として頑張りたいです」。日本一を懸けた最終決戦は、まだ始まったばかりだ。【本間翼】

 ▼大谷が11奪三振。シリーズでの2ケタ奪三振は13年第2戦の田中(楽天)以来19人目(21度目)で、初登板では7人目。初戦で2ケタ奪三振での敗戦投手は13年第1戦の則本(楽天)に次いで2人目となった。

 ▼大谷が2安打をマークした。シリーズで投手の複数安打は98年第1戦野村(横浜=3打数2安打)以来。2ケタ奪三振と複数安打を同時に記録したのは史上初だ。日本ハム投手の長打と複数安打は東映時代を通じて球団初。

 ▼大谷の1試合被本塁打2本は公式戦を通じて自己最多タイ(過去5度)。15年9月10日ソフトバンク戦以来で今季はなかった。1イニング2本は14年4月27日ロッテ戦で井口、角中に打たれて以来2度目。