あるときはコーチ、またあるときは…。中日に特命係長もびっくりの3つの顔を持つコーチが誕生した。3日、新コーチ陣容を発表。今季2軍担当の大塚晶文投手コーチ(44)がパドレス3Aに派遣される。籍と背番号74は残し「派遣コーチ」の肩書になる。

 森監督の秘策だった。「前から、うちが一番弱かったところ。将来的にも考えていかないといけないから」。指導者としてのノウハウ吸収とチームへの還元を期待しているが、それ以外に「スカウト業」という特命を課していた。

 同コーチは家族が住むサンディエゴを拠点に、普段はマイナーリーグで指導にあたる。現役時代に2年間パドレスに在籍した縁を生かし、北米地区の選手調査も任される。シーズン中に一時帰国して中日選手を指導することもある。1人3役だ。パ軍幹部と対談を済ませた同コーチは「学んだことを還元できるよう頑張りたい」と話した。

 これを足場に北米スカウト網の再構築に入る。04年に落合監督体制になって以来、ドミニカ共和国からの選手獲得を推進してきた。ベテラン渉外担当が13年に退団し、米球界とのつながりは一層薄くなった。ドミニカ共和国は各国の草刈り場と化し、安くて優良な選手の獲得が難しくなった。中日も他球団同様に、日米でプレー経験がある人材を米国に置くことを検討している。

 オマール・リナレス巡回コーチが間に入るキューバ人脈、森監督が築いたドミニカルートに加え、北米にもネットを広げ、さらにオーストラリアの人脈作りにも着手。強竜復活に欠かせないパイプを整えていく。【柏原誠】