おらが町のヒーローになる! 7年目の今季、大ブレークした阪神原口文仁捕手(24)が25日、故郷の埼玉・寄居町で野球教室を行った。少年野球6チーム100人を相手に熱心に指導。花輪利一郎町長(72)はさらなる活躍があれば、史上2人目の町民栄誉賞を授与すると約束した。「超変革」の申し子は17年も表彰ラッシュにしてみせる。

 原口に、ついに町の最高勲章授与の話が持ち上がった。寄居町のトップ、花輪町長が笑顔で構想を明かした。

 「(基準は)ゴールデングラブやベストナイン。ぜひそんな形で(町民栄誉賞を)表彰できればうれしいなと思います」

 今年11月、リオ五輪陸上男子1万メートルに出場した設楽悠太が町民栄誉賞の第1号。原口も今季の同じタイミングで特別功労賞を授与された。さらに上位ランクの町民栄誉賞を、条件付きで約束された。原口は「そうなんですか。頑張ります」と笑みを浮かべながら力を込めた。

 来季は捕手での出場にこだわる。ゴールデングラブ賞は古傷の右肩痛の状態など課題も残るが、セ・リーグ随一の打撃を発揮できれば、ベストナインや打撃タイトルを獲得して「町民の星」になることも不可能ではないだろう。

 ともかく、地元寄居町では現在進行形で原口フィーバーが起きている。5月の月間MVP獲得を受け、町内で「原口文仁後援会」が発足。神宮での試合時には大型バス1台を貸し切って応援に駆けつけた。

 この日の野球教室では、背番号94のユニホームを着た町民が数十人。観客席には「寄居の誇り原口」と記されたプラカードも掲げられていた。野球教室が終わると、原口のサイン欲しさに町民が長蛇の列。1人1人にしっかりと対応し、約30分の即席サイン会になった。町の総務課も「原口選手の活躍に、町民全体が元気をもらっています」。人口約3万5000人の小さな町が、1人の若虎のおかげで活気に満ちている。

 原口は「ユニホームを着れている今だからできること。影響力がある時に野球を通して社会貢献をしていけたらと思います」。今後は中学時代に在籍したシニアチームのグラウンドなどで体を動かしていく。町一番のヒーローへ。原口に新たな目標が芽生えた。【梶本長之】

 ◆埼玉県寄居町 埼玉県の北西部。秩父山間から流れ出す荒川の清流の扇状地に発達した。面積は64・25平方キロメートル。人口は約3万5000人(平成28年度住民基本台帳・世帯人口統計表による)。「風布川・日本水」が名水百選に認定され、国土交通省から町全体が「水の郷」に定められるなど“水の三冠王”認定を受けている。

<阪神原口バラ色の16年>

 ◆支配下登録、即デビュー 育成契約から4月27日に支配下選手登録、即1軍昇格。山田コーチのユニホームを借り、巨人戦で初出場。初安打。

 ◆月間MVP 先発5番も経験するなど5月の大活躍で月間MVPを獲得。育成経験のある野手としては史上初。

 ◆球宴 監督推薦で出場。第2戦(横浜)でフェンス直撃の二塁打を放つ活躍に、観戦した帝京の先輩、とんねるず石橋貴明も納得。

 ◆2桁本塁打 8月30日の中日戦で10号。最終的には打率2割9分9厘、11本塁打、46打点。

 ◆最大アップ 来季契約は推定年俸2200万円で更改。今春、育成時代の480万円から4.58倍。球団の日本人では史上最高のアップ率。