聖徳太子のお墨付き!? 中日ドラフト1位、明大・柳裕也投手(22)が日刊スポーツの新春インタビューでプロでの意気込み、モットーをたっぷり語った。大学や大学ジャパンで主将を務めた人間性は、かつて聖徳太子が役人の規範を示した「十七条憲法」をほぼクリアする優等生ぶり。聖徳太子も納得!? の背番号17が、2017年の球界を盛り上げる。

 飛鳥時代でも平成の世でも関係なく、柳は“出世”するかもしれない。十七条憲法は聖徳太子が官僚らに主従関係や人間の筋を示したもの。それをほぼクリアしながら、インタビューでは柳なりの芯の強さが浮かび上がった。

 「監督の言うことは聞きます。反発することはないです。でも大学で主将をやっていたし、ある程度、選手たちや自分の思っていることは監督に言うように心がけていた。監督もそれを聞いてくれる方だった。そこはうまくやってこられたかと。プロに入ってみて、感じたことをやれたらいいと思っています」

 昨秋ドラフトと前後して、投手柳と同じくらい、主将柳の顔が語られてきた。大学4年は主将、大学日本代表でも主将。ジャパンでは仲間の誕生日に用意されたケーキに、ボケて顔を突っ込んだ逸話がある。昨年12月の施設見学では高校生藤嶋のキャラを生かし、新人同士の距離を縮めた。結束を高めるためには体を張る。監督にも意見を言える。明大の部員120人をまとめた男の意識は高い。

 「他の人を見るのは大事なことと思っています。4年のときは1~4年全員と会話して、最後はだいたい(性格が)分かった。特に1~2年生にはよく話しかけていました。自分に声を掛けられてうれしいかは知りません(笑い)」

 自分も当然のように努力する。だから周囲がついてくる。柳を動かすのは感謝の思いだ。恩返しという言葉が何度も出てきた。

 「練習は自分のためにやるというより、応援してくれる人に恩返しをするために頑張っている。野球は野手が守ってくれている。プロ野球はファンや裏方さんがあってこそ。自分だけではできない」

 インタビューは「感謝したり、裏方さんやファンの皆さんを大事にしたりする心を、ブレずに持っていきたい」と締めた。一方で、験担ぎの話題に「ルーティンは気にしません。縛られたくないと思ってしまう方なので。それでうまくできたら、練習している意味がないって思っちゃうんです」と意に介さないように、プレーへのこだわりを失うことはない。

 謙虚だが主張もする。努力は怠らず、協調しながらチームを強くしていく存在。中日にはいないタイプと言われ、スカウト陣も有形無形のピースとして期待する。森監督は開幕ローテーション起用を早くも計算する。ただ、柳は来季の目標を聞かれても簡単に「新人王」や「開幕1軍」とは言わず「1日1日を大事にして、最終的にそうなれば」と言う。十七条憲法に添っていても、ただのデキる官僚ではない。実行力と人気を兼ね備え、黒子にも主役にもなり得る聖徳太子のようなスター性を秘めている。【取材・構成=柏原誠】

 ◆柳裕也(やなぎ・ゆうや)1994年(平6)4月22日、宮崎県都城市生まれ。大王小3年から志比田スポーツ少年団で野球を始める。小松原中では都城シニア。横浜で甲子園出場3度。明大では3年秋から主戦を務め、4年春は優勝。4年秋も優勝し、明治神宮大会を制した。東京6大学リーグ23勝、歴代8位の338奪三振。日米大学野球でもエースで8連続三振を奪い注目された。180センチ、83キロ。右投げ右打ち。

 ◆聖徳太子(しょうとくたいし) 飛鳥時代の皇族、政治家。574年に生まれ、622年に死没。諸説あるが、推古天皇の摂政として冠位十二階、十七条憲法を制定。中央集権の日本国家の原型を作ったといわれる。小野妹子を隋へ派遣して大陸文化の導入に努めた。仏教興隆にも尽力。十七条憲法は604年に制定し、官僚らへの規律、道徳の規範を示した。