「阿部の喝」をきっかけに、巨人打線が上向いた。直前まで2試合連続1安打と沈んでいた打線が8安打で3得点を奪い、ソフトバンクを下した。練習前、阿部慎之助内野手(37)が円陣の中心に立ち、伝えたテーマを若手選手が打席で体現。石川慎吾外野手(23)の2試合連続適時二塁打に辻東倫内野手(22)の2安打などで、先輩の愛ある喝に応えた。

 やるべきことが絞られていた。5回2死一、三塁。巨人石川が、初球のスライダーをフルスイングではじき返した。「ノーアウト二、三塁から簡単に2つアウトを取られた後で、1、2打席目もスライダーでやられた。初球から、多少ボールでもと思っていた」。狙い澄ましたライナーで左中間を破り、先制の2点を奪った。「状況を消化して、常に意味のある打席にしようと。初回なら後のバッターのために何球投げさせようだとか。5回はとにかく走者をかえすことでした」。必然の一打で、正外野手へのアピール材料を加えた。

 伏線があった。練習前、若手野手陣が集まった円陣の中心には、ベテラン阿部がいた。2試合連続1安打と苦しむ状況を打破するために、考えて打席に立つ重要性を説いていた。

 阿部 みんな同じように打ち取られている。もっと1打席1打席、広い視野で周りを見て何かを変えていかないと。頭を使って考えて、テーマを持ってやろう。若いやつが変わらないとチームは変わらないぞ。

 発奮した。内野で開幕1軍を目指す辻も、二塁打を含む2安打。いずれも高め直球を狙った結果だった。「1球も見逃さず、全部に手を出そうと。一流の選手が考えてやっているなら、若手はもっと考えてやらないとおかしい」。目の色を変えて食らいついた結果が5試合ぶりの勝利となった。開幕まで残り2週間。1軍生き残りへ全力を尽くす若手の存在がチームを底上げする。【松本岳志】