新人の糸も戦力だ。阪神ドラフト5位糸原健斗内野手(24=JX-ENEOS)が異例調整を経て開幕1軍メンバー入りすることが確実になった。開幕カード広島戦の舞台となるマツダスタジアムを経験させるため、今日21日から2軍に合流し同球場でのウエスタン・リーグ戦に出場する。巧打と堅守を認められ、球団の新人内野手では04年鳥谷以来の開幕1軍。結構丈夫な糸が、内野のほころびを縫い合わせる。

 売り出し中のルーキーが1軍から姿を消した。糸原はロッテ戦が行われる千葉ではなく、広島に向かった。出場機会を求め、今日21日から行われるウエスタン・リーグ広島戦(マツダスタジアム)へ…。開幕直前の2軍降格か。報道陣はざわついたが、真相はネガティブなものではなかった。むしろ、その逆だ。金本監督は言った。

 「マツダスタジアムは経験がないというから。経験と言えばオーバーだけど、マツダを見ておくということ。あそこは独特でしょ。天然芝と土が交ざっているから」

 異例の先乗り調整だ。首脳陣は1軍開幕カードの予行演習として送り出した。他の本拠地にはない内野の天然芝を把握するため、2試合に出場する予定。それが意味するものは、ひとつ。即戦力として事実上、開幕1軍メンバーに内定した。球団の新人でも内野手に限れば、黄金ルーキーと言われた鳥谷以来、13年ぶりの快挙。ドラフト5位の下位指名がやってのけた。

 金本監督をうならせたプレーがある。三塁で途中出場した19日のヤクルト戦。2死満塁のサヨナラ危機で三塁線に痛烈な打球が飛んだ。ベース後方で好捕した糸原は一塁に正確に送球し、ゲームセットで引き分け。このプレーをVTRで確認した金本監督は思わずつぶやいた。「あそこから、よく投げたな」。

 阪神守備陣は「超変革」を掲げた昨年から球際の弱さを指摘されている。前日は上本が2失策、この日は鳥谷に送球ミスが出た。内野は極めて不安定だ。糸原は球際に強く、内野すべてを守れる。スーパーサブとして、首脳陣のハートをつかんだ。

 打力も光るものがある。オープン戦は12試合に出場し、27打数9安打、打率3割3分3厘。途中出場で2安打した17日の中日戦で、糸原はこう言った。「まずは開幕1軍です。どこでも守れるのが持ち味なので」。自ら掲げた目標をクリア。伏兵ルーキーが今のチームに不足しているものを補う。【田口真一郎】

<糸原健斗(いとはら・けんと)アラカルト>

 ◆生まれ 1992年(平4)11月11日、島根出身。

 ◆球歴 開星(島根)で甲子園に3度出場。明大で3年、4年と明治神宮大会準優勝。3年時は東京6大学で春、秋とベストナイン(三塁)、大学選手権で首位打者。JX-ENEOSを経て、ドラフト5位で入団。新人合同自主トレの「主将」に任命され、春季キャンプは1軍スタート。

 ◆トレーニングジム門下生 現役時代に金本監督が通った広島市内のジム「アスリート」でアマ時代から体を鍛える。昨年12月にも合宿し、日本ハム中田や広島新井、丸らとともにトレーニングした。

 ◆座右の銘 「幸せはいつも自分の心が決める」

 ◆好きなタレント 吉岡里帆

 ◆サイズ 175センチ、80キロ。右投げ左打ち。