盗塁も開幕もGOサイン! 阪神にFA移籍した糸井嘉男外野手(35)が、「韋駄天(いだてん)モード」に突入した。ロッテ戦に3番指名打者で出場。1回に中前打で出塁すると、大幅なリードを取り、投手や捕手から本気のけん制をもらった。「いつでもいける」と、昨季53盗塁でタイトルを獲得した盗塁桜も間もなく開花する。

 一塁走者の糸井は今にも走りだしそうな雰囲気だった。1回2死一塁、打席には4番福留。マウンドのスタンリッジが糸井をにらむ。1歩、2歩…。見るからに大きなリードだった。

 カウント1-1から立て続けにけん制をもらった。投手だけではない。その直後には捕手からも鋭いけん制が飛んできた。昨季パ・リーグ盗塁王を塁に出す。それがどれほど恐ろしいことか。結局、スタートを切ることはなかったが、そのシーンがすべてを物語っていた。

 18日DeNA戦で今季初めて外野守備に就いた。19日ヤクルト戦では移籍1号本塁打を放った。キャンプ目前に右膝痛を発症し、慎重に仕上げてきたFA砲。シーズン開幕に向け、残されたチェック項目は、昨季タイトルを獲得した盗塁くらいか。そんな質問に糸井は真顔で答えた。

 「練習では走ってますもん。問題ない。いつでもいける」

 確かに今月10日の甲子園練習で二塁、三塁へのスライディングを始めた。「100(%)でやっても違和感ない」と全開を宣言した。この日も試合前の練習で一塁から二塁へダッシュを繰り返す姿があった。あとは踏み出すだけ。地面を蹴る準備は整っている。

 明日にでも開幕して構わない。糸井の口から、そんな力強い言葉も飛び出した。自身の状態を問われた時だ。

 「状態なんて1年間やってればいい時も悪い時もある。今MAXにしていても、(シーズンが終わって)成績が出るかわからない。いつでもいけます」

 打つ、守る、そして走る。すべての確認作業は終わっている。昨季、リーグワーストのチーム盗塁数59個だったタイガース。そこに加わる糸井の足。虎の機動力が飛躍的に上がる。【桝井聡】