石巻専修大(宮城)が福島大を6-0で下し、10年秋以来となる13季ぶり6度目の優勝を果たした。先発した最速146キロ右腕・松沢寛人(1年=糸魚川)が9回4安打5奪三振で今季2度目の完封勝利を挙げた。リーグトップの打率4割7分1厘をたたき出した1番・小野侑宏内野手(4年=聖和学園)が主将としてチームを戦闘集団に変え、東日本国際大(福島)の春8連覇を阻止。6月5日に開幕する全日本大学野球選手権大会(東京・神宮ほか)は、初戦で東京新大学野球連盟の優勝校と激突する。

 今まで感じたことのない興奮が全身を突き抜けた。チームメートから胴上げで祝福された主将の小野は、優勝した現実をうまくのみこめていなかった。

 「本当にうれしかった。そのひと言。今も優勝した実感がわかない…」

 小野の脳裏には、優勝を逃してからの半年間の記憶が再生されていた。昨秋は優勝決定戦で福島大に敗れ「正直2位で満足していた。メンタルが弱かった」。当時は練習中にエラーをすると笑いが起こることもあった。優勝を狙うには「背中を見せないといけない」と言葉だけではなく、率先垂範で体を張った。オフは夜10時まで使える室内練習場で延々と振り込んだ。気の抜けたプレーをした選手には、同学年にも容赦なく叱責(しっせき)する嫌われ役も買って出た。

 そんな小野の姿を見たチームは結束した。4月23日の東日本国際大戦では、1-5の9回に5点を奪って大逆転勝ち。2死満塁から3点適時二塁打を放った2番・赤間知文外野手(4年=盛岡大付)は「あいつが一番練習してきた。小野が引っ張ってくれて、やってやろうという気持ちになった」。リーグを通じて1番・小野とともに打率5割に迫る勢いで打ちまくり、9つの勝利を呼び込んだ。

 就任7年目で初優勝した酒井健志監督(39)は試合後、目を赤くしながら振り返った。「4年生が引っ張ってくれた。小野は態度と結果で表してくれた」。09年春以来8年ぶり4度目の大学選手権では初采配となる。「ミスを恐れず、南東北の代表として挑戦者で臨む」。小野も「まず1勝。自分たちができることをやれば通用する」と意気込む。全国舞台で、すべてを出し尽くす。【高橋洋平】