オレも若虎、忘れるな!! 阪神原口文仁捕手(25)が、自身35日ぶりの本塁打で先制し、チームを生き返らせた。中日バルデスに無安打と苦戦していた5回、左翼席に4月12日DeNA戦以来の3号ソロを放り込んだ。不振でベンチを温めることが多くなっていたが、ようやく上向きの兆しだ。

 原口が試合の均衡を破った。5回2死。カウント3-1から、中日先発バルデスの135キロ直球をジャストミート。鋭いライナー性の当たりはそのまま左翼席に突き刺さった。チーム初安打は先制の3号ソロとなった。

 原口 今日は真っすぐが多かったので、それをとらえられるようにセンター中心というイメージを持ちながらいきました。

 この日は7番でのスタメン出場。代打起用に甘んじることが多い中で、指揮官の起用にしっかりと応えた。

 約1カ月ぶりの1発の陰で、試合中から試行錯誤を重ねていた。1打席目は遊直。バットの軌道に納得いかなかった。次の打席に向けて、ベンチ裏で鏡に向かってバットを振ってチェック。ネクストでもイメージしながらスイングを繰り返した。そうした最善の準備が最高の結果を生み出した。

 試合直前に円陣の中心で選手が声出しをする。勝てば験を担いで、その選手が引き続き務めるという、しきたりがある。3日のヤクルト戦から6連勝した時は、原口が務めていた。まさにラッキーボーイ的な存在。ただ、その間は12打数2安打と原口らしくなかった。「試合で活躍しないと意味がないですから」。人一倍悔しさがあった。そのためてきた思いをバットに乗せた。

 金本監督は「もともと彼の勝負強さを期待して出した。ランナーのいない時は長打、1発でいい仕事をしてくれた」と評価した。今季から本格的に守る一塁は中谷やキャンベルの存在もある。「与えられたところで結果を残さないと今後も出る機会は減っていくと思う。その中でも集中してやれるようにしたい」と気を引き締めた。ヒーローインタビューの第一声は「必死のパッチで打ちました!」。いつもよりも思いが凝縮された言葉だったに違いない。【山川智之】