完全復活の予感が漂った。阪神糸井嘉男外野手(35)が5月7日広島戦以来、14試合ぶりのマルチ安打をマークした。先頭の7回にDeNA井納からチーム初安打となる遊撃内野安打を放つと、4点を追いかける8回だ。2死一、二塁の場面で、DeNA砂田の初球スライダーをつかまえた。

 低い弾道の打球は大歓声に包まれて右翼にはずむ。大盛り上がりの適時二塁打になった。劣勢でも決して諦めない。意地の一撃で観客を沸かす。さすが千両役者だ。

 舞台裏では試行錯誤を続けている。前日25日巨人戦で移籍後初めて1番に起用され29打席ぶりにHランプをともした。ようやくトンネルを抜けたが、笑顔はない。この日も試合前の練習では、右足でボールを踏んだ状態でティー打撃を実施。上体が突っ込まないための工夫だとみられるが、試せるものは試す。スランプ脱出へ必死にもがいている。

 金本監督は2試合連続で1番で起用した糸井の打順について「それはまだ分からん。明日になってみないと」と明言はしなかったが、今日27日からは3番に復帰する可能性もある。

 高山、中谷ら若手選手の状態にもよるが、3番糸井、4番福留の並びはやはり相手チームにとって脅威。試合後は問い掛けにも無言を貫きクラブハウスへと引き揚げた背番号7。キーマンの復調がプラスに働くことは間違いない。【桝井聡】