<あの球児は今:プロ野球キャンプ編>

 ヤクルト川上竜平外野手(21)が、がけっぷちからの逆襲を誓った。青森・光星学院を甲子園準優勝に導いた右の強打者は、ドラフト1位でヤクルトに入団も3年間で1軍出場なし。2軍でも思うような結果が残せないまま迎えた4年目は、キャンプから背水の陣で挑む。

 4年前の夏、主将として東北勢悲願の甲子園制覇に王手をかけたヤクルト川上が、必死にバットを振っていた。宮崎・西都キャンプは10時から日が暮れるまで練習漬けの毎日。午前の全体メニューが終われば、若手限定のロングティーで振り込む。その後は特守を行い、陸上競技場でのダッシュや室内での打撃練習。3年間で1度も1軍昇格経験のないドラフト1位は、歯を食いしばって厳しいメニューに汗を流していた。

 川上

 今年ダメだったらクビだと思っている。体はきついけど、危機感しかないですから。

 3年間の反省を生かす。1年目は左手首を痛めて出遅れ、2軍戦で打率1割7分5厘に終わった。2年目は出場機会、打率ともにアップしたが外野の控え止まり。手応えをつかみかけて臨んだ昨季、プロの厳しさをあらためて痛感した。

 川上

 環境に慣れすぎて、淡々と日々を過ごしてしまった。夏場にバテてご飯が食べられなくなって、体重は8キロ落ちました。筋トレもできないし、打球は飛ばなくなった。映像で打席に入っている自分を見たら、体がショボすぎて…。自分に腹が立ったし、本当に後悔しています。

 最大の課題は打撃の確実性アップだ。昨季は打率が再び1割台に落ち、三振70個を喫した。高校通算25本塁打のパワーに加え、遠投115メートルの強肩と50メートル6秒2の俊足も持っている。今キャンプは上体の力を抜いて体重移動を重視する新フォームに挑戦し、15日のシート打撃ではベテラン新垣から右前打を放った。

 川上

 毎年、打撃フォームは試行錯誤している。いろいろな方に教えてもらって、数え切れないほど変えましたよ。今の形は、しっくり来ています。

 結果を出せないまま次々と後輩が入団し、崖っぷちに立たされた。光星学院でクリーンアップを組んでいた1学年下のロッテ田村、阪神北條はキャンプ1軍スタートを勝ち取った。夕暮れ時の練習後、選手を待つ数人のファンを見ながら、寂しそうに言った。

 川上

 バレンタインチョコ、今年は1個ももらえませんでした…。こんな所(2軍)にいるからですよね。とにかく1軍に上がれるように、ファームで多く試合に出て3割は打ちます。

 故郷の沖縄から青森に越境入学し、母校の3季連続甲子園準優勝の礎を築いた。最高の評価で夢をつかんだ川上は、不完全燃焼でプロ生活を終わらせるつもりはない。【鹿野雄太】

 ◆川上竜平(かわかみ・りゅうへい)1993年(平5)5月8日、沖縄県那覇市生まれ。小2から仲井真ライオンズで野球を始める。6年時に捕手として全国大会16強。中3時には那覇国際ポニーズでジャイアンツ杯出場。光星学院高では1年夏からベンチ入り。主将として3年春センバツ出場。夏の甲子園では1大会3本塁打8打点で同校初の決勝進出に貢献した。11年ドラフトでヤクルトから1位指名。右投げ右打ち。181センチ、80キロ。