怪物ルーキーの開幕1軍の夢が散った。日本ハム梨田昌孝監督(54)は13日、高校生ドラフト1巡目の中田翔内野手(18)が開幕2軍スタートとなることを発表した。打撃不振と不安な守備力が原因で、前夜に首脳陣から降格を伝えられた中田はこの日、イースタン教育リーグ湘南戦(千葉・鎌ケ谷)に5番一塁で先発し、再出発をアピールする先制2ランを放った。実戦16打席ぶりの安打だった。今後は早期の1軍合流を目指し、2軍で実力アップに取り組む。

 怪物に与えられた試練だった。プロ入り以来ターゲットに絞っていた開幕切符は、中田の元に届かなかった。「自分でもそれくらいのレベルだと思う。考え過ぎてしまった部分があります。守備はまだまだだし。1日でも早く1軍の先輩と野球ができるように頑張りたいです」。悔しさを押し殺し、努めて冷静に心境を吐露した。

 追い詰められた前日の試合後、「ふざけるなよ、神様!」と言って自らを鼓舞したが、神様は非情だった。2軍行きを告げられたのはその夜だった。ホテルで休んでいると、梨田監督の部屋へと呼ばれた。扉を開けると、中には福良ヘッドコーチも待っていた。14打席連続無安打の身。「呼ばれたからには覚悟は決まっていました」。約40分、同監督の話に耳を傾けた。

 決め手となったのは守備力だった。守備第一のチーム方針のもと、リーグ連覇中の1軍野手陣の中に割って入るのは相当に高いハードルだった。今季もオープン戦チーム本塁打は8試合でわずか3本。スタイルは大きく変わっていない。「代打は疑問符がつくし、守備、代走は厳しい。でも飛ばす能力は自信を持っていい。それだけは忘れずに、大きな選手になってほしい」。梨田監督のゲキに、中田は力強くうなずいたという。2軍では三塁を中心に技術アップに励む。

 部屋を出ると、すぐにお世話になった先輩の元へあいさつに訪れた。特に、人一倍気にかけてもらったダルビッシュには「1軍に上がるのに、期間は関係ない。意地でも上がってこい!」と力強い言葉で励まされた。「ダルさんには申し訳ないです。熱く語ってくれたのはすごくうれしかった。自分は不器用なんで簡単にマスターできるかは分からないけど、早く上がりたい。約束したんで」。中田は気を引き締めた。

 その気持ちはすぐにグラウンドにぶつけた。鮮烈に出直しの1発を放った。この日の教育リーグ湘南戦、4回1死一塁の第2打席に、秦の127キロの直球系のボールをバックスクリーン左に運んだ。実戦16打席ぶりの安打。「ホームランもうれしかったけど、思い切り振れたことがよかった」。バットを構える前に背中を反る「カブレラポーズ」も久しぶりに出た。「周りに『姿勢が悪い、かぶさっている』と言われたので、初めのころに戻してみようかなと思った」。迷いは完全に吹っ切れていた。試合後には室内練習場に移動し、水上2軍監督のノックも受けた。「今までは自信を持って守れなかった。『(打球が)飛んできたらどうしよう』とか、余計なことを考えてしまっていた」。弱点克服へ早くも気持ちを切り替えている。

 「このままで終わりたくない。経験を積んでレベルアップしていきたい」。力を蓄えて再び表舞台へ。新人王の目標に変わりはない。【本間翼】